東証の「資本コストや株価を意識した経営」の要請とは:2023年3月、ROE8%未満・PBR1倍割れの会社が多いことを受けて、プライム・スタンダードの全上場会社に改善の計画と開示を求めた。2026年8月末時点でプライムの94%が開示
東京証券取引所の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を、東証の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」(2023年3月31日)、「要請のアップデート」(2026年4月28日)、「開示状況(2026年8月末時点)」(2026年9月15日)でまとめました。2023年当時、プライム市場の約半数、スタンダード市場の約6割の上場会社がROE8%未満、PBR1倍割れで、資本収益性や成長性に課題があるとされました。東証は、自社の資本コストと資本収益性を把握し、取締役会で分析・評価して、改善の計画を開示し、投資者との対話でアップデートし続けるよう求めています。自社株買いや増配だけの一過性の対応を期待するものではないとしています。2026年8月末時点で、プライム市場の94%(1,462社)、スタンダード市場の57%(887社)が開示(検討中を含む)。2026年4月には「経営資源の適切な配分」を中心に要請をアップデートしました。

プレ男決算のニュースで「PBR1倍割れの改善策として自社株買い」ってよく見るんだけど、なんでみんな急にPBRを気にし始めたの?

メル美東証が上場会社に何かお願いしたって聞いたよ
今回は、東証の「資本コストや株価を意識した経営」の要請です。東京証券取引所「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」(2023年3月31日)、「要請のアップデート」(2026年4月28日)、「開示状況(2026年8月末時点)」(2026年9月15日)で確認しました。
この記事は制度の説明です。開示をした会社の株の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
要請のきっかけ(2023年3月)
- 東証は、2023年3月31日、プライム市場とスタンダード市場の全上場会社に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請しました
- 背景には、当時、プライム市場の約半数、スタンダード市場の約6割の上場会社が、ROE8%未満・PBR1倍割れで、資本収益性や成長性に課題がある、という状況がありました
- PBRとROEの意味はPER・PBR・ROE・配当利回りの見方へ
何を求めているか
東証は、次の一連の対応を続けていくよう求めています。
- 自社の資本コストや資本収益性を的確に把握する
- その内容や市場の評価(株価)について、取締役会で現状を分析・評価する
- 改善に向けた計画を策定・開示する
- 投資者との対話の中で、取り組みをアップデートしていく
- 研究開発・人的資本・設備への投資、事業ポートフォリオの見直しなどで、経営資源の適切な配分を実現することが期待されています
- 自社株買いや増配が有効な場合もあるとしつつ、「自社株買いや増配のみの対応や、一過性の対応を期待するものではない」と書いています(→自社株買いのしくみ)

メル美株価を上げるために自社株買いだけすればいい、っていう話じゃないんだね。稼ぐ力そのものを上げてほしいってこと
どれくらい開示された?(2026年8月末時点)
| 市場 | 開示した会社(検討中を含む) | うちアップデート済み |
|---|---|---|
| プライム市場 | 94%(1,462社) | 1,273社 |
| スタンダード市場 | 57%(887社) | 529社 |
- 東証は、開示している会社の一覧表を毎月公表しています(各月末時点の状況を翌月15日ごろに更新)
2026年4月のアップデート
- 要請は「開始から4年目」に入り、東証は「経営資源の適切な配分」を中心に、投資家の期待と取り組みのポイントをまとめました
- 主なポイントは、
- 中長期的な経営方針(めざす姿・成長の道筋)を明確に示せているか
- めざす姿に向けた資本の使い方(配分・優先順位)を示せているか
- 保有する資産が価値を生む最適な状態か
- 1〜3について、取締役会で実効的に議論・監督しているか
- ねらいの一つとして、投資家の関心が株主還元から成長投資の成功へと移ることを挙げています
投資家が見るところ
- コーポレート・ガバナンスに関する報告書の【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】欄
- 会社が示す資本コストの数字と、ROE・ROICの目標
- 計画がアップデートされているか、中身(事業の見直し・成長投資)があるか
- 機関投資家が評価する「取組みの進展が見られる企業」の一覧も、東証が公表しています(2026年8月12日)
上場会社の企業統治の原則はコーポレートガバナンス・コードとは、機関投資家の原則はスチュワードシップ・コードとはへ。
まとめ
- 東証は2023年3月、プライム・スタンダードの全上場会社に、資本コストや株価を意識した経営を要請
- 背景は、ROE8%未満・PBR1倍割れの会社が多かったこと
- 求めているのは、分析→計画の開示→対話→アップデートの継続。自社株買い・増配だけではない
- 2026年8月末時点でプライムの94%、スタンダードの57%が開示
- 2026年4月に「経営資源の適切な配分」を中心にアップデート
参考文献
- 東京証券取引所. 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について(2023年3月31日). https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/jr4eth0000004vj2-att/jr4eth0000004w6n.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 東京証券取引所 上場部. 「資本コストや株価を意識した経営」に関する要請のアップデート(2026年4月28日). https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/jr4eth0000004vj2-att/t13vrt000001ung0.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 東京証券取引所 上場部. 「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示状況(2026年8月末時点)(2026年9月15日). https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/jr4eth0000004vj2-att/mklp770000006z6h.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 日本取引所グループ. 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(プライム・スタンダード市場). https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/02.html (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は投資についての一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。