自社株買い(自己株式の取得)のしくみ:会社が自分の株を買い戻すと、残った株1株あたりの利益は増える。会社法では株主総会か(定款があれば)取締役会で決め、取得の期間は1年まで、分配可能額の範囲内。買った株は「消却」できる
自社株買い(自己株式の取得)のしくみを、会社法156条・165条・178条・461条と金融商品取引法24条の6(e-Gov法令検索)でまとめました。会社が株主との合意で自分の株を有償で取得するには、取得する株式の数、交付する金銭等の総額、取得できる期間(1年以内)を株主総会で決めます。市場取引や公開買付けで取得する場合は、定款で定めれば取締役会で決められます。株主への配当と同じく、分配可能額を超えて取得することはできません。取得した自己株式は取締役会の決議で消却でき、上場会社は自己株券買付状況報告書を出します。KDDIの2026年3月期決算短信の発行済株式数・自己株式数の変化も例に、1株あたりの数字への影響を説明します。

メル美ニュースで「◯◯社が1,000億円の自社株買いを発表」って見たけど、会社が自分の株を買って、何がいいの?

プレ男配当と並んで「株主還元」って言われるよね。でも株主はお金をもらってないような…
今回は、自社株買い(自己株式の取得)のしくみです。会社法(156条・165条・178条・308条・453条・461条)と金融商品取引法24条の6の条文(e-Gov法令検索)で確認しました。
この記事はしくみの説明です。自社株買いを発表した会社の株の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
自社株買いとは
- 会社が、自分が発行した株を株主から買い取ることです。会社法では「自己株式の取得」といいます
- 会社が持っている自分の株(自己株式)には、議決権がなく(会社法308条2項)、配当も出ません(453条は、配当の相手から会社自身を除いています)。そのため、ほかの株主の1株あたりの取り分が増えることになります
会社法のルール
何を決めるか(156条)
株主との合意で自分の株を有償で取得するには、あらかじめ株主総会の決議で次のことを決めます。
- 取得する株式の数
- 引き換えに渡す金銭等の内容と総額
- 取得できる期間(1年を超えることはできない)
取締役会で決められる場合(165条)
- 市場での取引や公開買付け(TOB)で取得する場合、取締役会設置会社は、定款で定めれば取締役会の決議で決められます(→TOBとMBO)
お金の上限(461条)
- 自己株式の取得で株主に渡す金銭等の総額は、分配可能額を超えてはなりません。配当と同じ枠の中で行います
買った株の「消却」(178条)
- 会社は自己株式を消却(なくす)できます。取締役会設置会社では、消却する株数を取締役会の決議で決めます
上場会社の報告(金商法24条の6)
- 上場会社は、自己株式の取得を決めたら、自己株券買付状況報告書を出します。EDINETで見られます(→決算短信と有価証券報告書の読み方)

メル美配当と同じ「分配可能額」から出すんだ。だから株主還元って呼ばれるんだね
1株あたりの数字はどう変わる?
あくまで仮の計算です。
| 自社株買いの前 | 1割を買って消却したあと | |
|---|---|---|
| 当期純利益 | 100億円 | 100億円(変わらないとする) |
| 発行済株式数 | 1億株 | 9,000万株 |
| 1株あたり利益(EPS) | 100円 | 約111円 |
- 利益が同じでも、株数が減ればEPSは上がります。ROEも、自己資本が減るぶん上がりやすくなります(→PER・PBR・ROE・配当利回りの見方)
- ただし、自社株買いには会社の現金を使います。そのお金を事業への投資に回した場合との比較が大切です
実例:決算短信の株式数の欄
決算短信の最初のページには、期末発行済株式数と期末自己株式数が載っています。たとえばKDDIの2026年3月期決算短信では、
| 2025年3月期 | 2026年3月期 | |
|---|---|---|
| 期末発行済株式数(自己株式を含む) | 43億8,369万株 | 41億8,785万株 |
| 期末自己株式数 | 4億524万株 | 3億8,077万株 |
- 発行済株式数が減った理由(自己株式の消却など)は、会社の開示で確かめましょう(→KDDIの強みとは)
配当とのちがい
| 配当 | 自社株買い | |
|---|---|---|
| 株主が受け取るもの | お金(配当金) | 売った株主はお金。売らない株主は1株あたりの取り分が増える |
| お金の上限 | 分配可能額 | 分配可能額(同じ枠) |
| 決め方 | 原則、株主総会 | 株主総会、または(定款があれば)取締役会 |
- 配当については配当・株主優待と権利確定日へ
自社株買いを株主還元の中心にしている会社の例はリクルートホールディングスの強みとはへ。
反対に株数が増える増資は公募増資・第三者割当と「希薄化」へ。
自社株買い専用の立会外取引は立会外取引(ToSTNeT)とはへ。
まとめ
- 自社株買いは、会社が自分の株を買い戻すこと(自己株式の取得)
- 株主総会(市場取引・TOBなら定款で取締役会)で、株数・総額・期間(1年以内)を決める
- 使えるお金は分配可能額の範囲。配当と同じ枠
- 買った株は消却できる。株数が減ると1株あたりの利益が増える
- 実際の取得の状況は、自己株券買付状況報告書や決算短信の株式数で確かめる
参考文献
- 会社法(平成17年法律第86号)第156条・第165条・第178条・第308条・第453条・第461条(e-Gov法令検索). https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 (閲覧日:2026年10月10日)
- 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第24条の6(e-Gov法令検索). https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000025 (閲覧日:2026年10月10日)
- KDDI. 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月12日). https://newsroom.kddi.com/ir-news/assets/2026/kddi_ir-1148_4471/kddi_2026_4qc_PsXBu3.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は投資についての一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。