クラレの強みとは:ポバール樹脂・光学用ポバールフィルム・EVOH樹脂〈エバール〉などのビニルアセテートが営業利益の大半。2025年12月期は営業利益589億円(−30.8%)、イソプレン関連の減損で当期純利益75億円(−76.5%)
クラレを、2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年2月10日、東証の適時開示)で分析しました。売上高8,084億円(−2.2%)、営業利益589億円(−30.8%、営業利益率7.3%、欧州経済の停滞、在庫評価差額、原燃料価格の上昇)、経常利益515億円(−36.8%)、親会社株主に帰属する当期純利益75億円(−76.5%、イソプレンケミカル事業とスチレン系熱可塑性エラストマー関連資産の減損損失など)、ROE1.0%、自己資本比率57.0%。セグメントの営業利益は、ビニルアセテート625億円(−28.6%、ポバール樹脂・光学用ポバールフィルム・高機能中間膜・水溶性ポバールフィルム・EVOH樹脂)、機能材料108億円(−16.4%)、トレーディング60億円、繊維26億円、イソプレンは49億円の損失。年54円の配当(配当性向228.7%)、2026年12月期は営業利益700億円(+18.9%)・当期純利益400億円・年64円(記念配当10円を含む)の予想。東レ・信越化学工業との比較と、見ておくべき数字も。売買をすすめるものではありません。

プレ男クラレって、繊維の会社?

メル美決算短信を見ると、繊維もあるけど、利益の大半は「ポバール」という樹脂やフィルムの事業なんだって。テレビ向けの需要が伸びた光学用フィルムもあるみたい
企業分析の連載、181社目はクラレです。2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年2月10日)で確認しました。会社のサイトは今回の確認方法では読めなかったため、東京証券取引所の適時開示に載っている同じ決算短信を使っています。比較には、この連載の東レの強みとは・信越化学工業の強みとはで確認した数字を使っています。
この記事は会社のしくみと数字の解説で、クラレ株の売買をすすめるものではありません。目標株価や「買い時」も書きません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
1. ひとことで言うと
ポバール樹脂・光学用ポバールフィルム・高機能中間膜・EVOH樹脂〈エバール〉などの「ビニルアセテート」を中心に、イソプレン、メタアクリル・活性炭などの機能材料、繊維、トレーディングを手がける化学の会社
| 項目(日本基準・連結) | 2025年12月期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 8,084億円 | −2.2% |
| 営業利益 | 589億円 | −30.8% |
| 営業利益率 | 7.3% | 前期 10.3% |
| 経常利益 | 515億円 | −36.8% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 75億円 | −76.5% |
| ROE(自己資本当期純利益率) | 1.0% | 前期 4.3% |
| 自己資本比率 | 57.0% | 前期 59.2% |
| 配当 | 年54円(配当性向228.7%) | 前期 54円 |
- 当期純利益が大きく減ったのは、イソプレンケミカル事業関連資産とスチレン系熱可塑性エラストマー関連資産の減損損失などを特別損失に計上したためです(減損損失の合計296億円)
2. 何で稼いでいるか
| セグメント | 主な動き(決算短信の記載) | 売上高 | 営業利益 |
|---|---|---|---|
| ビニルアセテート | 欧州経済の停滞、在庫評価差額・原燃料価格の上昇。光学用ポバールフィルムと水溶性ポバールフィルムは販売数量が増加 | 4,045億円(−2.5%) | 625億円(−28.6%) |
| 機能材料 | 米国の寒波や生産トラブル、メタアクリルの生産能力の縮小 | 2,069億円(−0.5%) | 108億円(−16.4%) |
| トレーディング | 繊維関連事業など | 688億円(+1.7%) | 60億円(+2.1%) |
| 繊維 | 液晶ポリマー繊維〈ベクトラン〉など | 607億円(−3.1%) | 26億円(+118.1%) |
| イソプレン | タイ拠点の稼働が安定、中国の建築用途の低迷 | 804億円(+5.3%) | −49億円 |
- その他を含むセグメントの営業利益の合計790億円のうち、ビニルアセテートが約79%です(計算値)
3. 強み
会社の資料にある事実から、この連載で強みと考えた点です。
① ポバールとEVOH
- 光学用ポバールフィルムは、中国の家電買替支援策やスポーツイベント向けのテレビ需要で販売数量が増えました。水溶性ポバールフィルムは個包装洗剤の需要増で増加し、EVOH樹脂〈エバール〉も全体として販売数量が増えました
② 高機能中間膜
- 特殊アイオノマーシート〈セントリグラス〉は、米州を中心に販売が順調でした
③ 事業ポートフォリオの見直し
- 会社は、改善が見込めない一部の事業・製品で、譲渡や縮小・撤退を判断したとしています
4. 弱み・リスク
① 原燃料価格と在庫評価
- ビニルアセテートは、原燃料価格の上昇や在庫評価差額のマイナス影響で、営業利益が28.6%減りました。ポバール樹脂では、外部購入ユーティリティの供給停止などで製造を一時停止しました
② イソプレンの赤字と減損
- イソプレンは49億円の営業損失で、関連資産の減損損失を計上しました。米国の関税政策で、欧州市場などでアジアの競合との競争が激しくなったとしています
③ 配当性向
- 当期純利益が減ったため、配当性向は228.7%になりました
5. ライバルとの比較
素材・化学の会社と並べます。会計基準(東レはIFRS)と決算期(東レ・信越化学は3月期)、利益の指標が違うので、おおまかな比較です。
| クラレ(2025年12月期) | 東レ(2026年3月期) | 信越化学工業(2026年3月期) | |
|---|---|---|---|
| 売上(売上収益) | 8,084億円(−2.2%) | 2兆5,851億円(+0.9%) | 2兆5,739億円(+0.5%) |
| 利益(営業/事業) | 589億円(営業) | 1,419億円(事業) | 6,352億円(営業) |
| 利益率 | 7.3% | 5.5% | 24.7% |
| ROE | 1.0% | 4.5% | 10.4% |
| 自己資本(帰属持分)比率 | 57.0% | 51.8% | 78.7% |
- 利益率は東レを上回る一方、2025年12月期は減損でROEが下がりました(→東レの強みとは、信越化学工業の強みとは)。総合化学は三菱ケミカルグループの強みとはも
6. 投資プレイヤー的チェックポイント
クラレの決算を見るときに、毎回確かめておきたい数字です(売買の判断基準ではありません)。
| 見ておく数字 | 2025年12月期 | どこに書いてある |
|---|---|---|
| ビニルアセテートの営業利益 | 625億円 | 決算短信(セグメント別) |
| イソプレンの損益 | −49億円 | 決算短信(セグメント別) |
| 減損損失 | 296億円 | 決算短信(キャッシュ・フロー計算書) |
| 会社の業績予想 | 2026年12月期 売上高8,500億円、営業利益700億円、当期純利益400億円 | 決算短信のサマリー |
| 配当 | 年54円、2026年12月期予想64円(記念配当10円を含む) | 決算短信 |
- 指標の読み方はPER・PBR・ROE・配当利回りの見方へ

プレ男ポバールの事業が利益の柱なんだね。原燃料価格と、来年に利益が戻るかを見ておこう
合成ゴムや光学フィルムの会社は日本ゼオンの強みとはも参考にしてください。
まとめ
- クラレは、ポバール・EVOHなどのビニルアセテートが中心の化学の会社
- 2025年12月期は営業利益589億円(−30.8%)
- 営業利益の約79%がビニルアセテート
- イソプレン関連の減損で当期純利益75億円(−76.5%)
- 2026年12月期は営業利益700億円・年64円の予想
参考文献
- クラレ. 2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年2月10日). https://www2.jpx.co.jp/disc/34050/140120260209552507.pdf (閲覧日:2026年10月12日)
- 東レ. 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月13日). https://www.toray.co.jp/ir/pdf/fin/fin_a133.pdf (閲覧日:2026年10月12日)
- 信越化学工業. 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年4月28日). https://www.shinetsu.co.jp/wp-content/uploads/2025/07/20260428_con_J.pdf (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は投資についての一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。