東レの強みとは:衣料・産業用の繊維、樹脂・フィルム、炭素繊維、水処理膜など「素材」の会社。2026年3月期は売上収益2兆5,851億円・事業利益1,419億円。韓国子会社のバッテリーセパレータフィルムの減損で営業利益は972億円(−23.7%)
東レを、2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月13日)で分析しました。売上収益2兆5,851億円(+0.9%)、会社が重視する事業利益1,419億円(−0.6%、率5.5%)、営業利益972億円(−23.7%)、親会社の所有者に帰属する当期利益795億円(+2.1%)、ROE4.5%。事業利益は繊維680億円(+6.0%)、機能化成品563億円(樹脂は自動車用途の低迷、バッテリーセパレータフィルムの販売低迷で−6.2%)、環境・エンジニアリング288億円(+11.2%、中東向けの逆浸透膜など)、炭素繊維複合材料176億円(−21.7%、航空宇宙は回復も圧力容器・風力発電翼は調整)、ライフサイエンス−1億円。韓国子会社のバッテリーセパレータフィルム事業でEV市場の低迷などにより固定資産の減損損失251億円を計上。年20円の配当、2027年3月期は事業利益1,600億円・記念配当を含め年26円の予想。信越化学との比較と、見ておくべき数字も。売買をすすめるものではありません。

メル美東レって、服の素材や飛行機の炭素繊維の会社だよね

プレ男素材の会社って、ふだん名前を見ないけど、どうやって稼いでいるんだろう
企業分析の連載、56社目は東レです。2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月13日)で確認しました。比較には、この連載の信越化学工業の強みとはで確認した信越化学の数字を使っています。
この記事は会社のしくみと数字の解説で、東レ株の売買をすすめるものではありません。目標株価や「買い時」も書きません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
1. ひとことで言うと
繊維、樹脂・フィルム、炭素繊維、水処理膜、医薬・医療機器など、いろいろな「素材」をつくって売る会社
| 項目(IFRS・連結) | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 2兆5,851億円 | +0.9% |
| 事業利益(会社が重視する指標) | 1,419億円 | −0.6% |
| 事業利益率 | 5.5% | 前期 5.6% |
| 営業利益 | 972億円 | −23.7% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 795億円 | +2.1% |
| ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率) | 4.5% | 前期 4.5% |
| 親会社所有者帰属持分比率 | 51.8% | 前期 51.9% |
| 配当 | 年20円(配当性向37.8%) | 前期 18円 |
- 事業利益は、営業利益から非経常的な損益を除いたものです
- 営業利益が大きく減ったのは、韓国子会社のバッテリーセパレータフィルム事業で、EV市場の低迷などにより収益性が悪化し、固定資産の減損損失251億円を計上したことなどによります
2. 何で稼いでいるか
セグメント別の売上収益と事業利益(2026年3月期)です。
| セグメント | 中身(決算短信の記載から) | 売上収益 | 事業利益 |
|---|---|---|---|
| 繊維 | 衣料用途、自動車などの産業用途 | 1兆511億円(+4.0%) | 680億円(+6.0%) |
| 機能化成品 | 樹脂・ケミカル、フィルム、電子情報材料 | 8,944億円(−5.3%) | 563億円(−6.2%) |
| 環境・エンジニアリング | 水処理(逆浸透膜など)、エンジニアリング | 2,669億円(+12.8%) | 288億円(+11.2%) |
| 炭素繊維複合材料 | 航空宇宙、圧力容器、風力発電翼など | 3,001億円(横ばい) | 176億円(−21.7%) |
| ライフサイエンス | 医薬、医療機器 | 524億円(−1.4%) | −1億円 |
- 稼ぎ頭は繊維と機能化成品です
3. 強み
会社の資料で確かめられる事実から、強みと考えられる点を挙げます。
① 繊維の安定
- 衣料用途は欧州の低迷や海外品との競争の影響があるものの、総じて堅調。繊維は増収増益でした
② 水処理
- 環境・エンジニアリングは、中東向けの逆浸透膜や国内のプラント建設が堅調で、+11.2%の増益でした
③ 炭素繊維の航空宇宙
- 炭素繊維の航空宇宙用途は順調に回復しているとしています
4. 弱み・リスク
① EV向けのフィルム
- バッテリーセパレータフィルムの販売が低迷し、韓国子会社で減損を計上しました。EV市場の動きに左右されます
② 自動車・中国の市況
- 樹脂は自動車用途の市況低迷、電子情報材料は中国でのパネル需要の低迷と競争激化の影響を受けました
③ 低い利益率
- 事業利益率は5.5%、ROEは4.5%です(東証の要請については東証の「資本コストや株価を意識した経営」の要請へ)
④ 一度きりの損失
- 中国での生産移管に伴う経済補償金、インドネシアの子会社での倉庫火災による損失も計上しています
5. ライバルとの比較
素材・化学の大手、信越化学工業と比べます。どちらも2026年3月期ですが、会計基準(信越化学は日本基準)と利益の指標が違うので、おおまかな比較です。
| 東レ | 信越化学工業 | |
|---|---|---|
| 売上 | 2兆5,851億円(+0.9%) | 2兆5,739億円(+0.5%) |
| 利益 | 事業利益1,419億円(率5.5%) | 営業利益6,352億円(率24.7%) |
| 親会社の所有者(株主)に帰属する当期利益 | 795億円 | 4,744億円 |
| ROE | 4.5% | 10.4% |
- 売上はほぼ同じなのに、利益は信越化学が4倍以上です。信越化学は塩化ビニル樹脂や半導体シリコンウエハーなど、利益率の高い製品が中心です(→信越化学工業の強みとは)
6. 投資プレイヤー的チェックポイント
東レの決算を見るときに、毎回確かめておきたい数字です(売買の判断基準ではありません)。
| 見ておく数字 | 2026年3月期 | どこに書いてある |
|---|---|---|
| 事業利益と営業利益の差(減損など) | 1,419億円と972億円 | 決算短信(セグメント情報の注記) |
| 機能化成品・炭素繊維の事業利益 | 563億円・176億円 | 決算短信 |
| 会社の業績予想 | 2027年3月期 売上収益2兆8,300億円、事業利益1,600億円 | 決算短信のサマリー |
| 配当 | 年20円、2027年3月期予想26円(記念配当3円を含む) | 決算短信 |
- 会社は、2027年3月期の予想に中東の影響に伴うリスクを織り込んだとしています
- 指標の読み方はPER・PBR・ROE・配当利回りの見方へ

プレ男服の繊維から水をきれいにする膜まで、いろんな素材で稼いでいるんだ。EV向けのフィルムの減損みたいな、一度きりの損失も見ておかなきゃ
ガラスや化学品の素材メーカーはAGCの強みとはと旭化成の強みとはも参考にしてください。
ポバールなどの化学の会社はクラレの強みとはも参考にしてください。
まとめ
- 東レは、繊維・樹脂・フィルム・炭素繊維・水処理膜などの素材の会社
- 2026年3月期は事業利益1,419億円、営業利益は減損で972億円(−23.7%)
- 稼ぎ頭は繊維(680億円)と機能化成品(563億円)
- 課題はEV向けフィルム、自動車・中国の市況、低い利益率
- 2027年3月期は事業利益1,600億円・年26円の予想
参考文献
- 東レ. 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月13日). https://www.toray.co.jp/ir/pdf/fin/fin_a133.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 信越化学工業. 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年4月28日). https://www.shinetsu.co.jp/wp-content/uploads/2025/07/20260428_con_J.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は投資についての一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。