信越化学工業の強みとは:半導体のシリコンウエハー・フォトレジストと、塩化ビニル・か性ソーダの2本柱。2026年3月期は売上高2兆5,739億円・営業利益6,352億円(前期比14.4%減)。電子材料は増益、塩ビは市況の軟化で43%減益。自己資本比率78.7%
信越化学工業を、2026年3月期決算短信〔日本基準〕(2026年4月28日)で分析しました。売上高2兆5,739億円(+0.5%)、営業利益6,352億円(−14.4%、営業利益率24.7%)、親会社株主に帰属する当期純利益4,744億円(−11.2%)。セグメントは電子材料(シリコンウエハー、フォトレジスト、マスクブランクスなど。売上高1兆157億円、営業利益3,445億円)、生活環境基盤材料(塩化ビニル、か性ソーダ。売上高9,813億円、営業利益1,648億円、−43%)、機能材料(シリコーンなど。営業利益1,009億円)など。海外売上高比率79%、自己資本比率78.7%。2027年3月期の業績予想は開示を見送り。SUMCO(2026年12月期中間期)との比較と、見ておくべき数字も。売買をすすめるものではありません。

プレ男信越化学って、なにをつくってる会社? 化学っていうと、なんだか地味なイメージ…

メル美半導体の材料と、水道管とかに使う塩ビ、両方つくってるらしいよ
企業分析の連載、11社目は信越化学工業です。2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年4月28日)で確認しました。比較にはSUMCOの2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信(2026年8月6日)を使っています。
この記事は会社のしくみと数字の解説で、信越化学株の売買をすすめるものではありません。目標株価や「買い時」も書きません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
1. ひとことで言うと
半導体をつくるための材料(シリコンウエハー、フォトレジストなど)と、塩化ビニル・か性ソーダなどの基礎素材を、世界で大量に供給する化学メーカー
| 項目(日本基準・連結) | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2兆5,739億円 | +0.5% |
| 営業利益 | 6,352億円 | −14.4% |
| 営業利益率 | 24.7% | 前期 29.0% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 4,744億円 | −11.2% |
| ROE(自己資本当期純利益率) | 10.4% | 前期 12.0% |
| 自己資本比率 | 78.7% | 前期 82.6% |
| 海外売上高比率 | 79% | — |
| 研究開発費 | 778億円 | 前期 731億円 |
2. 何で稼いでいるか
決算短信の補足資料(2026年3月期)です。
| セグメント | 主な製品(決算短信の記載から) | 売上高 | 営業利益 | 前期比(営業利益) |
|---|---|---|---|---|
| 電子材料 | シリコンウエハー、フォトレジスト、マスクブランクス、磁性材料 など | 1兆157億円 | 3,445億円 | +6% |
| 生活環境基盤材料 | 塩化ビニル、か性ソーダ | 9,813億円 | 1,648億円 | −43% |
| 機能材料 | 珪素化学(シリコーンなど)、製剤用セルロース など | 4,408億円 | 1,009億円 | +1% |
| 加工・商事・技術サービス | 半導体ウエハー関連容器、シリコーン成型品 など | 1,359億円 | 273億円 | −5% |
- 営業利益の半分以上(約54%)が電子材料です
- 電子材料について、会社は「半導体市場は、AI関連が引き続き活況を呈し、それ以外の分野の需要がようやく上向いてきました」としています
- 生活環境基盤材料は、塩化ビニルについて「北米で昨年半ばにかけ需要は堅調でしたが、その後弱含み市況は軟化」、アジアなどでは「価格の低迷が続きました」としています
3. 強み
会社の資料で確かめられる事実から、強みと考えられる点を挙げます。
① AI・半導体向けの材料
- シリコンウエハー、フォトレジスト、マスクブランクスなどの半導体材料の売上を伸ばし、電子材料は増収増益(売上高+9%、営業利益+6%)
- 会社は「先端電子材料総合メーカーとしての機能-特にAIの進展を支える機能の拡充」を掲げ、露光材料の新拠点(伊勢崎工場)の操業を始めました
② 塩ビの供給力(米国拠点)
- 塩化ビニルでは、「米国拠点で築き上げた供給力のフル活用」を掲げています。市況が悪い年でも、営業利益1,648億円を確保しました
③ とても厚い財務
- 自己資本比率78.7%、営業キャッシュ・フロー7,127億円(2026年3月期)
4. 弱み・リスク
① 塩ビの市況
- 生活環境基盤材料の営業利益は2,914億円→1,648億円(−43%)。四半期ごとに見ると、2026年1〜3月期は185億円まで下がりました。塩ビの値段で利益が大きく動きます
② 原料・エネルギー価格
- 会社は、「イラン、中東での戦争勃発に起因する原料、エネルギー価格上昇」を受けて、全製品の値上げに着手したとしています
③ 半導体の波
- 電子材料は好調でしたが、半導体の需要には波があります(→東京エレクトロンの強みとは)
④ 業績予想を出していない
- 2027年3月期の業績予想と配当予想は「開示が可能となった時点で速やかに開示」としていて、決算発表の時点では出していません
5. ライバルとの比較
シリコンウエハーの大手、SUMCOと比べます。決算期が違い(SUMCOは12月期)、信越化学の電子材料にはウエハー以外も含まれるので、おおまかな比較です。
| 信越化学 電子材料(2026年3月期・通期) | SUMCO 全社(2026年12月期・中間期) | |
|---|---|---|
| 売上高 | 1兆157億円 | 2,150億円(6か月) |
| 営業利益 | 3,445億円(利益率約34%) | −63億円(営業損失) |
- 同じ半導体材料でも、製品の幅や品目で利益は大きく違います。SUMCOは2026年1〜6月に営業損失でした
- 信越化学の電子材料は、ウエハーのほかフォトレジストなども含みます
6. 投資プレイヤー的チェックポイント
信越化学の決算を見るときに、毎回確かめておきたい数字です(売買の判断基準ではありません)。
| 見ておく数字 | 2026年3月期 | どこに書いてある |
|---|---|---|
| 電子材料の営業利益 | 3,445億円 | 決算短信(補足資料) |
| 生活環境基盤材料の営業利益(四半期ごと) | 通期1,648億円、1〜3月期185億円 | 決算短信(補足資料「四半期業績の推移」) |
| 営業利益率 | 24.7% | 決算短信のサマリー |
| 海外売上高比率 | 79% | 決算短信(補足資料) |
| ROE | 10.4% | 決算短信のサマリー |
| 配当 | 年106円(配当性向41.9%) | 決算短信 |
- 業績予想が出ていないので、四半期ごとの推移が手がかりです
- 指標の読み方はPER・PBR・ROE・配当利回りの見方へ

プレ男半導体の材料が伸びても、塩ビが落ちると全体は減益になるんだ。2本柱って、そういうことか
同じくマスクブランクスをつくる会社はHOYAの強みとはへ。
繊維・樹脂・炭素繊維の素材の会社は東レの強みとはへ。
光学フィルムやテープの素材メーカーは日東電工の強みとはも参考にしてください。
産業ガスなども手がける化学グループは三菱ケミカルグループの強みとはも参考にしてください。
産業ガスの会社は日本酸素ホールディングスの強みとは、半導体材料の会社はレゾナック・ホールディングスの強みとはも参考にしてください。
シリコンウェーハだけを手がける会社はSUMCOの強みとはも参考にしてください。
まとめ
- 信越化学は、半導体材料と塩化ビニル・か性ソーダの2本柱の化学メーカー
- 2026年3月期は売上高2兆5,739億円、営業利益6,352億円(−14.4%)
- 電子材料は増益(AI関連が活況)、塩ビは市況軟化で43%減益
- 強みはAI・半導体向けの材料、米国の塩ビ供給力、自己資本比率78.7%
- 弱みは塩ビ市況、原料・エネルギー価格、半導体の波。業績予想は未開示
参考文献
- 信越化学工業. 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年4月28日). https://www.shinetsu.co.jp/wp-content/uploads/2025/07/20260428_con_J.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- SUMCO. 2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年8月6日). https://ssl4.eir-parts.net/doc/3436/tdnet/2864795/00.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は投資についての一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。