日立製作所の強みとは:IT・電力網・鉄道・産業機器の4本柱で、2026年3月期の売上収益10兆5,867億円、純利益8,023億円(前期比30.3%増)。伸びたのは送電(パワーグリッド)のエナジー。デジタル事業「Lumada」が全体をつなぐ。弱みは海外の地政学と為替
日立製作所を、2026年3月期決算短信と決算説明資料、第157期有価証券報告書で分析しました。売上収益10兆5,867億円(前期比8%増)、Adjusted EBITA1兆3,114億円(12.4%)、親会社株主に帰属する当期利益8,023億円。セグメントはデジタルシステム&サービス(Adjusted EBITA4,501億円)、エナジー(4,160億円、前期比+1,640億円)、モビリティ(1,081億円)、コネクティブインダストリーズ(3,674億円)。会社は増収の要因にLumada事業の拡大、力強いパワーグリッド需要、国内のデジタル需要、鉄道信号・制御事業を挙げています。海外売上収益は63%。2027年3月期は売上収益11兆1,000億円、Adjusted EBITA1兆4,200億円の見通し。シーメンス(2025年9月期)との比較と、見ておくべき数字も。売買をすすめるものではありません。

プレ男日立って、家電の会社でしょ?

メル美いまは送電線とか鉄道とか、ITで稼いでるらしいよ。どこで一番もうけてるか見てみよう
企業分析の連載、7社目は日立製作所です。2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(2026年4月27日)、2026年3月期 連結決算の概要(説明会資料)、第157期 有価証券報告書で確認しました。比較にはシーメンスの2025年度(2025年9月期)の決算発表を使っています。
この記事は会社のしくみと数字の解説で、日立株の売買をすすめるものではありません。目標株価や「買い時」も書きません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
1. ひとことで言うと
IT(デジタル)、電力網(エナジー)、鉄道(モビリティ)、産業機器・エレベーターなど(コネクティブインダストリーズ)を世界で手がける会社。デジタルの「Lumada事業」で、それぞれの事業をつなぐ
| 項目(IFRS・連結) | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 10兆5,867億円 | +8.2% |
| 調整後営業利益 | 1兆1,992億円 | +23.4% |
| Adjusted EBITA | 1兆3,114億円(率12.4%) | +21.0% |
| 親会社株主に帰属する当期利益 | 8,023億円 | +30.3% |
| ROE | 12.9% | 前期 10.7% |
| 海外売上収益の割合 | 63% | 前期 61% |
- Adjusted EBITAは、日立がセグメントの業績を見るのに使う利益で、売上総利益から販売費・一般管理費を引き、企業買収で認識した無形資産などの償却費を足し戻したものです(2026年3月期から計算方法を変更)
2. 何で稼いでいるか
決算短信のセグメント情報(2026年3月期)です。セグメント損益は Adjusted EBITA です。
| セグメント | 主な製品・サービス | 売上収益 | Adjusted EBITA | 利益率 | 割合※ |
|---|---|---|---|---|---|
| デジタルシステム&サービス | システム構築、クラウド、コンサル、ストレージ・サーバ、ソフトウェア、ATM | 2兆9,401億円 | 4,501億円 | 15.3% | 約33% |
| エナジー | パワーグリッド(送電)、原子力 | 3兆2,200億円 | 4,160億円 | 12.9% | 約30% |
| モビリティ | 鉄道システム | 1兆3,216億円 | 1,081億円 | 8.2% | 約8% |
| コネクティブインダストリーズ | エレベーター・エスカレーター、家電・空調、産業機器、半導体製造装置、医用分析装置 など | 3兆2,628億円 | 3,674億円 | 11.3% | 約27% |
※報告セグメントの Adjusted EBITA の小計(1兆3,646億円、「その他」を含む)に対する割合。
- エナジーの Adjusted EBITA は前期より1,640億円増(売上+23%)で、いちばん伸びました
- 会社は増収の理由に、Lumada事業の拡大、力強いパワーグリッド需要、堅調な国内のデジタル需要、鉄道信号・制御事業の好調を挙げています
どこで売っている?
| 地域 | 売上収益 | 割合 |
|---|---|---|
| 日本 | 3兆9,129億円 | 37% |
| 欧州 | 2兆2,750億円 | 21% |
| アジア | 1兆9,159億円 | 18% |
| 北米 | 1兆6,538億円 | 16% |
| その他 | 8,292億円 | 8% |
3. 強み
会社の資料で確かめられる事実から、強みと考えられる点を挙げます。
① 電力網(パワーグリッド)の需要
- エナジーセクターは、力強いパワーグリッド需要を取り込み、売上収益が前期比23%増、Adjusted EBITAが1,640億円増えました
- 2027年3月期の見通しでも、エナジーは売上収益3兆7,000億円(+15%)、Adjusted EBITA5,000億円と、さらに伸びる計画です
② デジタル(Lumada事業)が事業をつなぐ
- 日立は、デジタルをコアにした「真のOne Hitachi」への変革を掲げ、2026年3月期の期首から事業群を再編しました
- 説明資料では、各セクターの収益性の改善の理由に、Lumada事業を含むサービス事業の拡大が何度も出てきます。リカーリング型(継続課金型)のデジタルサービス「HMAX」を広げて Lumada 事業をけん引する、としています
③ 財務の改善と株主還元
- 営業活動によるキャッシュ・フローは1兆6,680億円(+4,958億円)、有利子負債は1兆90億円(−1,970億円)
- 2026年度は約8,000億円の株主還元を予定(説明資料)。2026年3月期の配当は年50円
4. 弱み・リスク
有報の「事業等のリスク」には、次の項目が並んでいます。
- 経済環境に係るリスク
- サプライチェーン(原材料・部品の調達、取引先の信用)
- 海外事業における地政学等のリスク
- 環境、人的資本、テクノロジー、自然災害、そのほか会社経営全般のリスク
数字で見ると、
- 売上の63%が海外で、欧州が21%。為替の前提(2027年3月期は1ドル150円・1ユーロ175円)が1円円安になると、売上収益はドルで145億円、ユーロで90億円増える、と会社は試算しています(逆に円高なら減ります)
- モビリティは利益率8.2%と、ほかの事業より低めです
- 大型のインフラ案件は、完成までの期間が長く、コストの見通しがずれると利益に響きます
5. ライバルとの比較
電力・鉄道・産業のデジタル化を手がけるシーメンス(ドイツ)と比べます。決算期(シーメンスは9月期)・会計基準・事業の範囲・通貨が違うので、おおまかな比較です。
| 日立(2026年3月期) | シーメンス(2025年9月期) | |
|---|---|---|
| 売上 | 売上収益 10兆5,867億円(+8%) | 売上高 789億ユーロ(+4%) |
| 利益 | 親会社株主に帰属する当期利益 8,023億円(+30%) | 純利益 104億ユーロ(+16%、3年連続で過去最高) |
| 事業の利益 | Adjusted EBITA 1兆3,114億円 | Industrial Business の利益 118億ユーロ(過去最高) |
- どちらも、電力網・デジタルの需要が追い風になっている時期です
- 円とユーロの換算はしていません
6. 投資プレイヤー的チェックポイント
日立の決算を見るときに、毎回確かめておきたい数字です(売買の判断基準ではありません)。
| 見ておく数字 | 2026年3月期 | どこに書いてある |
|---|---|---|
| セグメント別の Adjusted EBITA(とくにエナジー・DSS) | エナジー4,160億円、DSS4,501億円 | 決算短信・説明資料 |
| Adjusted EBITA率 | 12.4%(2027年3月期見通し12.8%) | 説明資料 |
| 地域別の売上(とくに欧州・北米) | 欧州21%、北米16% | 決算短信 |
| 営業キャッシュ・フロー | 1兆6,680億円 | 決算短信 |
| 為替感応度 | 1円円安で売上収益 ドル+145億円・ユーロ+90億円 | 説明資料 |
| 通期見通し | 売上収益11兆1,000億円、Adjusted EBITA1兆4,200億円、純利益8,500億円 | 説明資料 |
| ROE | 12.9% | 決算短信のサマリー |
- 2026年3月期からセグメントの区分と Adjusted EBITA の計算方法が変わったので、昔の数字と比べるときは注意が必要です
- 指標の読み方はPER・PBR・ROE・配当利回りの見方、決算書の読み方は決算短信・有価証券報告書の読み方へ

プレ男いまの日立の稼ぎ頭は、ITと送電線なんだ! 家電の会社のイメージとは全然ちがう
空調の会社はダイキン工業の強みとはへ。
発電システムや防衛の会社は三菱重工業の強みとはへ。
まとめ
- 日立はIT・電力網・鉄道・産業機器の4本柱。2026年3月期の売上収益10兆5,867億円、純利益8,023億円(+30.3%)
- 稼ぎ頭はデジタルシステム&サービス(4,501億円)とエナジー(4,160億円)
- 強みはパワーグリッド需要、Lumada事業によるサービス化、キャッシュ創出と株主還元
- 弱みは海外(63%)の地政学と為替、サプライチェーン、モビリティの利益率
- 2026年3月期から区分と利益の計算方法が変わった点に注意
参考文献
- 日立製作所. 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年4月27日). https://www.hitachi.com/content/dam/hitachi/global/ja_jp/press/files/2026/04/0427/2025_An.pdf (閲覧日:2026年10月6日)
- 日立製作所. 2026年3月期 連結決算の概要FY2025. https://www.hitachi.com/content/dam/hitachi/global/ja_jp/press/files/2026/04/0427/2025_Anpre.pdf (閲覧日:2026年10月6日)
- 日立製作所. 第157期 有価証券報告書. https://www.hitachi.com/content/dam/hitachi/global/ja_jp/ir/media/library/stock/hit_sr_fy2025_2_ja.pdf (閲覧日:2026年10月6日)
- Siemens AG. Earnings Release Q4 FY 2025, July 1 to September 30, 2025. https://assets.new.siemens.com/siemens/assets/api/uuid:3948cdd4-35e0-4c1d-8412-9aed4097b3d0/HQCOPR202511117277EN.pdf (閲覧日:2026年10月6日)
この記事は投資についての一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。