日本製鉄の強みとは:国内最大の鉄鋼メーカーが、2025年6月にUSスチールを買収。2026年3月期は売上収益10兆632億円(+15.7%)だが、事業再編損2,712億円などで当期利益は171億円(−95%)。中国の過剰生産と安い鋼材輸出が国際市況を押し下げる
日本製鉄を、2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月13日)で分析しました。売上収益10兆632億円(+15.7%)、事業利益5,141億円(−24.8%)、会社が実力を表すとする実力ベース事業利益6,504億円、親会社の所有者に帰属する当期利益171億円(−95.1%)。2025年6月にUnited States Steel Corporation(USスチール)の買収を完了し、連結の総資産は14兆6,606億円、有利子負債は5兆1,742億円(前期2兆5,074億円)に。事業再編損は2,712億円。セグメントは製鉄(事業利益4,399億円)、エンジニアリング、ケミカル&マテリアル、システムソリューション。会社は、中国の過剰生産と安価な鋼材輸出が国際市況の低迷を招いていると説明。2027年3月期は事業利益5,300億円、実力ベース事業利益7,000億円以上をめざし、USスチールで1,000億円以上の貢献を見込みます(中東情勢の影響は反映せず)。JFEとの比較と、見ておくべき数字も。売買をすすめるものではありません。

プレ男日本製鉄がアメリカのUSスチールを買ったってニュース、大きく報道されてたよね。それで儲かってるの?

メル美売上は増えたけど、利益は大きく減ったって聞いたよ。どういうことだろう
企業分析の連載、27社目は日本製鉄です。2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月13日)で確認しました。比較にはJFEホールディングスの「2026年3月期決算 インベスターズ・ミーティング資料」(2026年5月)を使っています。
この記事は会社のしくみと数字の解説で、日本製鉄株の売買をすすめるものではありません。目標株価や「買い時」も書きません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
1. ひとことで言うと
日本最大の鉄鋼メーカー。2025年6月にUSスチールを買収し、米国・欧州に本格参入した
| 項目(IFRS・連結) | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 10兆632億円 | +15.7% |
| 事業利益(会社の代表的な指標) | 5,141億円 | −24.8% |
| 実力ベース事業利益(在庫評価差などを除く) | 6,504億円 | 前期 7,937億円 |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 171億円 | −95.1% |
| 親会社所有者帰属持分比率 | 37.7% | 前期 49.2% |
| 有利子負債 | 5兆1,742億円 | 前期 2兆5,074億円 |
| 配当 | 年24円(分割後換算) | — |
- 2025年10月1日に1株を5株に分割しました(→株式分割とは)
- 当期利益が大きく減ったのは、事業再編損2,712億円などのためです。会社は配当の説明で「USスチール合併に伴う一過的な損失」と書いています
2. 何で稼いでいるか
| セグメント | 売上収益 | 事業利益 | 前期の事業利益 |
|---|---|---|---|
| 製鉄 | 9兆2,217億円 | 4,399億円 | 6,210億円 |
| システムソリューション | 3,828億円 | 433億円 | 388億円 |
| エンジニアリング | 3,944億円 | 231億円 | 146億円 |
| ケミカル&マテリアル | 2,579億円 | 219億円 | 189億円 |
- ほとんどが製鉄です。USスチールの連結で売上が大きく増えた一方、製鉄の事業利益は約1,800億円減りました
3. 強み
会社の資料で確かめられる事実から、強みと考えられる点を挙げます。
① 海外の製造拠点の拡大
- 「需要の伸びが確実に期待できる地域」で、現地で鉄を一貫生産する拠点を広げています。USスチール買収で米国・欧州に本格参入し、インドでも能力を拡張しています
- USスチールには技術者を中心に100名超を派遣し、操業・品質管理の技術を移しているとしています
② 国内の損益分岐点の引き下げ
- 生産設備の構造対策による固定費削減、価格の是正、品種の高度化で損益分岐点を下げ、需要が減る中でも実力ベースで6,000億円以上の事業利益を確保し得るとしています
③ グループの再編
- 2026年4月に黒崎播磨を完全子会社化し、5月に山陽特殊製鋼の吸収合併を決めるなど、グループの再編を進めています
4. 弱み・リスク
① 世界の鉄鋼市況
- 会社は、中国の経済減速による需給ギャップで過剰生産が続き、安価な鋼材輸出が国際市況の低迷を招いていると書いています。世界の鉄鋼事業環境は「危機的な状況が継続」としています
② 借入れの増加
- USスチールの買収資金などで、有利子負債は2兆5,074億円→5兆1,742億円。親会社所有者帰属持分比率は49.2%→37.7%に下がりました
③ USスチールの立て直し
- 2027年3月期は、USスチールで実力ベース事業利益1,000億円以上の貢献を見込みます。計画どおりに改善できるかが大きな論点です
④ 中東情勢
- 2027年3月期の業績予想には、中東情勢の影響を反映していません(合理的に定量化できないため)。原燃料コストの上昇や中東向け輸出の減少などを想定される影響に挙げています
5. ライバルとの比較
国内2位のJFEホールディングスと比べます(どちらもIFRS・2026年3月期)。「事業利益」の定義は両社で少し違うので、おおまかな比較です。
| 日本製鉄 | JFEホールディングス | |
|---|---|---|
| 売上収益 | 10兆632億円(+15.7%) | 4兆5,392億円(−3,204億円) |
| 事業利益 | 5,141億円 | 1,353億円(前年と同じ) |
| 当期利益(親会社に帰属) | 171億円 | 701億円 |
| 主な動き | USスチールを買収・連結 | 国内中心 |
- 規模は日本製鉄が大きく上回りますが、2026年3月期の当期利益はJFEのほうが大きい結果でした(日本製鉄は事業再編損の影響)
6. 投資プレイヤー的チェックポイント
日本製鉄の決算を見るときに、毎回確かめておきたい数字です(売買の判断基準ではありません)。
| 見ておく数字 | 2026年3月期 | どこに書いてある |
|---|---|---|
| 実力ベース事業利益 | 6,504億円 | 決算短信 |
| USスチールの収益貢献 | 2027年3月期 1,000億円以上の見込み | 決算短信(今後の見通し) |
| 有利子負債 | 5兆1,742億円 | 決算短信(財政状態) |
| 会社の業績予想 | 2027年3月期 売上収益11兆円、事業利益5,300億円、当期利益2,200億円 | 決算短信のサマリー |
| 配当 | 年24円(下限24円の方針) | 決算短信 |
- 会社は、2026年度の配当について1株あたり年24円を下限とする方針です
- 指標の読み方はPER・PBR・ROE・配当利回りの見方へ。会社の買収のしくみはTOBとMBO

メル美大きな買収で売上は増えたけど、借金も増えて、利益は一時的に落ちた。これからUSスチールが稼げるかがカギなんだね
機械や電力の事業も持つ鉄鋼メーカーは神戸製鋼所の強みとはも参考にしてください。
まとめ
- 日本製鉄は、日本最大の鉄鋼メーカー。2025年6月にUSスチールを買収
- 2026年3月期は売上収益10兆632億円(+15.7%)、当期利益は171億円(事業再編損2,712億円など)
- 有利子負債は5兆1,742億円に倍増
- リスクは中国の過剰生産、USスチールの立て直し、中東情勢
- 2027年3月期は実力ベース事業利益7,000億円以上をめざす
参考文献
- 日本製鉄. 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月13日). https://www.nipponsteel.com/ir/library/settlement/pdf/20260513_100.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- JFEホールディングス. 2026年3月期決算 インベスターズ・ミーティング資料(2026年5月). https://azcms.ir-service.net/DATA/5411/ir/140120260507518774.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は投資についての一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。