スタートアップの資金調達のルールが変わる:有価証券届出書がいらない募集の上限を1億円から5億円に、5億〜10億円は簡易な様式の届出書で。プロ向けの私募の相手方に「潜在的特定投資家」を追加(2026年改正、金融庁)
スタートアップ企業への資金供給を広げるための改正を、金融庁の「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」(2026年4月)でまとめました(法律は2026年7月15日成立)。一般投資家から資金を集めるときに有価証券届出書の提出がいらない基準を1億円未満から5億円未満に引き上げ、5億円以上10億円未満の募集は簡易な様式の届出書(少額募集)を使えるようにします。プロ投資家(特定投資家)向けの私募では、要件を満たしながら移行手続をしていない「潜在的特定投資家」も勧誘の相手方に加えます(行為規制上は一般投資家として扱われる)。役員・従業員への株式報酬の勧誘は「募集」から除外。背景と、個人投資家が気をつけたい点も。

プレ男上場していないスタートアップに投資するルールが変わるって聞いたよ

メル美会社がお金を集めやすくなるみたい。投資する側は何に気をつければいいのかな
今回は、スタートアップ企業への資金供給を広げるための制度の見直しです。金融庁の「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」(2026年4月)で確認しました(2026年10月12日閲覧)。この法律は、2026年4月10日に国会に提出され、7月15日に成立しました。
この記事は制度の説明です。特定の会社への投資をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
背景
- 金融庁は、スタートアップ・成長企業への成長資金の供給を広げるため、非上場株式の発行・流通を活発にすることが急ぎの課題だとしています
- プロ投資家(特定投資家)向けの資金調達の制度を整えてきたものの、特定投資家の裾野が狭く、資金調達の例は限られていました
① 一般投資家から集めるときの開示ルールの緩和
| 集める金額 | これまで | 見直し後 |
|---|---|---|
| 1億円未満 | 有価証券届出書は不要 | 不要 |
| 1億円以上〜5億円未満 | 簡易な様式の届出書 | 不要(提出免除の基準を5億円に引き上げ) |
| 5億円以上〜10億円未満 | 通常の届出書 | 簡易な様式の届出書を使える(少額募集) |
| 10億円以上 | 通常の届出書 | 通常の届出書 |
- 有価証券届出書は、会社が投資家にお金を募るときに出す、事業や財務などの情報をまとめた書類です
- 少額の募集の届出書は、2025年2月にも、はじめて出すときの財務諸表を2期分から1期分(比較情報を含む)にするなどの簡素化が行われています
② プロ向けの私募の相手方を広げる
- 特定投資家私募は、証券会社の仲介のもとで、簡易な情報(監査は不要)を提供することを条件に、届出書なしでプロ投資家に勧誘できる制度です
- 特定投資家の要件を満たし、高い情報分析能力がありながら、保護を受けたいなどの理由で特定投資家への移行手続をしていない人(潜在的特定投資家)を、勧誘の相手方に加えます
- 潜在的特定投資家は、行為規制のうえでは一般投資家として扱われ、仲介する証券会社には、適合性原則や説明義務などが一般投資家と同じように適用されます
③ 株式報酬の開示ルールの見直し
- 会社が、自社や子会社の役員・従業員に株式や新株予約権を渡すときの勧誘は、上場・非上場を問わず「募集」から外し、有価証券届出書を不要にします(→ストックオプション(新株予約権)とは)

メル美会社は書類の負担が軽くなるけど、そのぶん投資する側が自分で情報を確かめることが大事になるのね
個人投資家が気をつけたい点
- 有価証券届出書が不要になる範囲が広がるので、投資するときは、会社がどんな情報を出しているかを自分で確かめる必要があります
- 非上場株式は、上場株式とちがってすぐに売れないことが多く、価値がなくなることもあります
- 少額で非上場株式に投資する方法には株式投資型クラウドファンディングのしくみとリスク、税制の優遇はエンジェル税制のしくみ、ファンドを通じた投資はプライベート・エクイティ(PE)ファンドとはへ
- 「未公開株が上場すれば何倍にも」という勧誘は、詐欺のおそれがあります(→未公開株・社債の勧誘に注意)
まとめ
- 有価証券届出書の提出免除の基準を1億円から5億円に引き上げ
- 5億円以上10億円未満の募集は、簡易な様式の届出書(少額募集)
- プロ向けの私募の相手方に潜在的特定投資家を追加(行為規制上は一般投資家)
- 役員・従業員への株式報酬の勧誘は「募集」から除外
- 投資する側は、情報を自分で確かめることと、売りにくさに注意
参考文献
- 金融庁. 金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料(2026年4月). https://www.fsa.go.jp/common/diet/221/02/03.pdf (閲覧日:2026年10月12日)
- 金融庁. 第221回国会における金融庁関連法律案. https://www.fsa.go.jp/common/diet/221/index.html (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は投資についての一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。