
メル美アプリで知り合って半年付き合った人が、実は結婚してたって…。友だちが、その人の奥さんから「慰謝料を払って」って連絡を受けたんだって。知らなかったのに払わなきゃいけないの?

プレ男「もうすぐ離婚する」って言われてた場合はどうなるんだろう。だまされた側なのに責任を問われるのはつらいな…。
今回は、相手が既婚者だと知らずに(または「離婚する」と言われて)付き合ったときの法律です。民法・刑法の条文(e-Gov法令検索)と、最高裁判所の判例(裁判所ウェブサイトの判決文・裁判要旨)で確かめました。
この記事は一般的な解説で、法律相談の代わりにはなりません。請求を受けたら、ひとりで払う・払わないを決める前に、弁護士や法テラス(サポートダイヤル 0570-078374)に相談してください。
慰謝料のもとになるのは「故意又は過失」
- 民法709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定めています
- 既婚者と知りながら関係をもった場合について、最高裁は昭和41年4月1日の判決(昭和40年(オ)第1161号)で、相手が他人の妻であることを知りながら情交・同棲関係に入って婚姻生活を壊し、夫に離婚を決意させた人は、故意に夫の権利を侵害したもので、夫の精神的苦痛をつぐなう義務がある、としています
- では、知らなかった場合や、「離婚する」と信じていた場合はどうでしょうか
最高裁 2026年6月5日判決:「離婚したと信じた理由」だけで決めてはいけない
最高裁判所第二小法廷 令和8年6月5日判決(令和7年(受)第933号 損害賠償請求事件)の事案と判断を、判決文からまとめます。
どんな事件?
- 夫が、妻Aと不貞行為をしたとする男性Yに、慰謝料などを請求した
- 夫婦は同居していたものの、ほとんど会話がなく、用件はメールで伝え合う関係になっていた。夫は妻に離婚を考えていると伝え、妻も了承。その後、夫は家計を別々にすることと互いのプライバシーに干渉しないことをメールで提案し、妻も同意した
- 妻はYに、自分の記入した離婚届を見せ、夫と離婚するつもりだと伝え、夫とのメールのやりとりも見せていた
- 高裁は、Yが「妻は既婚者」と知りながら関係を持ったとは認められないとしつつ、「離婚したとか婚姻関係が破綻しているなどとうそを言って不貞行為に及ぶ人が多いことは世間でよく知られていて、それをうのみにするのは注意が足りない」として、過失を認めた
最高裁の判断
- Yは、離婚したと信じたことについて相当の理由があったとはいえないとしても、その婚姻関係がすでに破綻していると信じ、かつ、そう信ずるについて相当の理由があったとみる余地がある
- それを検討しないまま、ただちにYに過失があるとした高裁の判断は、過失に関する法令の解釈適用を誤ったもの
- 高裁判決のうちYが負けた部分を破棄し、審理をやり直させるために高松高裁に差し戻した(裁判官全員一致)

プレ男「だまされた人はみんな責任なし」ではないけど、「うのみにしたから過失あり」と決めつけてもいけない、ということか。
補足意見が示した2つの判例
この判決の尾島明裁判官の補足意見は、次の2つの最高裁判例を挙げています。
| 判例 | 内容(補足意見の説明) |
|---|---|
| 最高裁 平成8年3月26日判決(平成5年(オ)第281号) | 配偶者の一方と第三者が肉体関係をもった当時、夫婦の婚姻関係がすでに破綻していたときは、特段の事情のない限り、第三者はもう一方の配偶者に対して不法行為責任を負わない |
| 最高裁 平成31年2月19日判決(平成29年(受)第1456号) | 不貞の相手方に離婚そのものの慰謝料を請求できるのは、相手方が夫婦を離婚させることを意図して不当に干渉するなどの特段の事情がある場合に限られる |
- 補足意見は、こうした請求の事件は実務上相当数あるとして、安易で紋切り型の判断に陥らないよう、裁判所と当事者の双方に求めています
うそをついて結婚まですれば「重婚罪」
- 民法732条:配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない
- 刑法184条:配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、2年以下の拘禁刑。その相手方となって結婚した者も同様
- 重ねてした結婚は、各当事者・その親族・検察官などが家庭裁判所に取消しを請求でき、前の結婚の配偶者も取消しを請求できます(民法744条)
- 名古屋高裁 昭和36年11月8日判決は、妻が知らない間に妻の署名押印を勝手に使ってうその協議離婚届を作って提出し、戸籍上の婚姻を消したうえで別の女性との婚姻届を出した事件で、重婚罪が成立するとしています(この事件では、有印私文書偽造・同行使、公正証書原本不実記載・同行使でも起訴されています)

メル美勝手に離婚届を出されないためには「不受理申出」という制度もあるよ。
勝手に離婚届・婚姻届を出されないための制度は、戸籍法の不受理申出の記事で説明しています。
請求を受けたら、受けそうになったら
- 内容証明などで請求が届いても、すぐに払う・すぐに無視するのではなく、まず弁護士や法テラスに相談する
- 「独身だと言われた」「離婚届を見せられた」など、相手が何を言っていたかがわかるメッセージや記録は、消さずに残しておく
- 反対に、請求する側でも「払わないと会社にばらす」などとおどせば恐喝になりえます(くわしくはこちら)
- 慰謝料の請求には時効もあります。浮気の慰謝料の時効の記事もどうぞ

最高裁は2026年6月、「離婚したと信じた理由」がないというだけで直ちに過失を認めず、「婚姻関係が破綻していると信じた相当の理由」があったかも検討するよう求めました。
まとめ
- 慰謝料(民法709条)には故意又は過失が必要。既婚者と知りながら婚姻生活を壊せば故意の侵害(最高裁 昭和41年)
- 最高裁 2026年6月5日:離婚するつもりだと伝えられ、離婚届も見せられていた人について、「離婚したと信じた相当の理由がない」だけでただちに過失を認めたのはまちがい。婚姻関係が破綻していると信じた相当の理由があったかも検討すべき、として差し戻し
- 夫婦関係がすでに破綻していたときは、特段の事情のない限り第三者は責任を負わない(最高裁 平成8年)
- 配偶者がいるのに重ねて結婚すれば重婚罪(2年以下の拘禁刑)。相手方も同じ
- マッチングアプリの年齢確認などのルールはマッチングアプリと法律、結婚・離婚全体は結婚・離婚・浮気の法律で
参考文献
- 民法(明治29年法律第89号)第709条、第732条、第744条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (閲覧日:2026年10月22日)
- 刑法(明治40年法律第45号)第184条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045 (閲覧日:2026年10月22日)
- 最高裁判所第二小法廷 令和8年6月5日判決(令和7年(受)第933号 損害賠償請求事件). 裁判所ウェブサイト. https://www.courts.go.jp/hanrei/96060/detail2/index.html 、判決文 https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-96060.pdf (閲覧日:2026年10月22日)
- 最高裁判所第二小法廷 昭和41年4月1日判決(昭和40年(オ)第1161号 慰藉料請求事件). 集民83号17頁. 裁判所ウェブサイト. https://www.courts.go.jp/hanrei/77775/detail2/index.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 名古屋高等裁判所 昭和36年11月8日判決(昭和36年(う)第402号 有印私文書偽造同行使公正証書原本不実記載同行使重婚被告事件). 裁判所ウェブサイト. https://www.courts.go.jp/hanrei/23073/detail2/index.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 厚生労働省. その他の相談先(法テラス・サポートダイヤル). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_sonota.html (閲覧日:2026年10月22日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。