
プレ男半年前にバイクで事故にあってから、車のブレーキ音を聞くと、そのときの場面が急に頭に浮かんで動けなくなるんだ。もう体は治ってるのに。

メル美こわい体験のあとって、こころにも傷が残ることがあるよね。ひとりでがまんしなくていいと思う。
こんにちは、Dr. Taro です。 命の危険を感じるような出来事のあと、その記憶に長く苦しめられることがあります。それはPTSD(心的外傷後ストレス障害)かもしれません。 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の「こころの情報サイト」をもとにまとめました。
PTSDとは
- PTSD は、死の危険に直面した後、その体験の記憶が自分の意志とは関係なくフラッシュバックのように思い出されたり、悪夢に見たりすることが続き、不安や緊張が高まったり、つらさのあまり現実感がなくなったりする状態です(NCNP)
- NCNP は、PTSD は決して珍しいものではなく、精神医療では「ありふれた」病気のひとつだとしています
- きっかけになる出来事は、死亡や重いけが、性暴力の脅威に直面することです。自分自身の体験だけでなく、他人が亡くなったり重いけがをしたりするのを目撃すること、家族や親しい友人が突然の暴力的な出来事で亡くなったり重いけがをしたりしたと知らされることも含まれます
怖い体験の直後の反応は、多くが一時的
- 生死にかかわる体験をすると、多くの人に不安、不眠、動悸などが出ますが、多くの場合は一時的です
- フラッシュバックのような症状が出ても、数か月のうちに落ち着く人も少なくありません
- 一方で、時間がたっても楽にならない、かえってつらくなる、数か月から数年たってから症状がはっきりしてくる場合もあります(NCNP)
PTSDのサイン
NCNP は、PTSD でよく見られる症状として次のものをあげています。
- 突然、つらい記憶がよみがえる:忘れたつもりでも、ふとしたときに恐怖、苦痛、怒り、哀しみ、無力感などがよみがえる。出来事をもう一度体験しているように生々しく思い出す。同じ悪夢をくり返し見る
- いつも神経が張りつめている:常にイライラする、ささいなことで驚きやすい、警戒心が極端に強くなる、ぐっすり眠れない
- 記憶を呼び起こす状況や場面をさける:その結果、行動が制限されて、ふだんの生活が送れなくなることも少なくありません
- 感覚がまひする:つらい記憶から心を守るために、感情や感覚がまひし、家族や友人への愛情や優しさを感じられなくなったり、人に心を許せなくなったりする
周りから見ると、何もないのに突然感情が不安定になったように見えるため、周りの人が理解に苦しむこともあります。また、つらさのあまり、必要以上に自分を責めたり、自信を失ったりすることもあります(NCNP)。

メル美急に怒ったり泣いたりするのも、本人のせいじゃなくて症状のことがあるんだね。
こころが弱いからではない
- 生死に関わる体験をしても、全員が PTSD になるわけではありません。でも NCNP は、PTSD になるのはこころの弱い人、ということはないとはっきり書いています。それまで何の問題もなく生活していた人が PTSD に悩まされている例もたくさんあります
- なりやすさに関わることとして、NCNP は次の点をあげています
- どんな出来事を体験したか(本当に死の危険を意識するほどだったか)
- 被害のあとの社会的サポートが足りない、生活のストレスが大きい
- 恐怖反応の引き金になりやすいアドレナリンの分泌が大きい人(スポーツマンタイプの人)や、危機に直面して人を救出する人々
- 以前にもトラウマ体験や、子どものころの虐待などの逆境体験が複数ある
- カフェインによって不安が強まることも少なくなく、被害のあとで元気を出すためにカフェインが増えている人は注意が必要です(NCNP)
相談の目安
- 怖い体験の直後は、ほとんどの人に症状が出ます。そのため、事件や事故から1か月くらいの間は様子をみて、自然の回復を待つとされています
- 数か月たっても同じような症状が続く、または悪くなる傾向があれば、PTSD の可能性を考えて専門家に相談してください(NCNP)
- いまの症状と過去の体験を結びつけられないこともあります。過去の体験に関係していると気づけば、それが回復への第一歩になります(NCNP)
どこに相談すればいい?
NCNP は、次のような相談先をあげています。
- 犯罪被害の場合:警察には犯罪被害についての相談窓口があるので、「カウンセリングを受けたい」と伝えてください。行政の相談窓口や、犯罪被害者支援センターなどでもかまいません。犯罪被害者等基本法にもとづく医療費の給付金制度もあります
- 大きな災害のとき:救護チームに精神科医や公認心理師が派遣されることもあるので、救援スタッフに相談できないかたずねてみる
- 地元の精神保健福祉センターや、精神科・心療内科など、PTSD に知識のある医師や公認心理師のいる施設
- 精神科を受診するか、保健所などの相談窓口を通じて、信頼できる精神科やカウンセラーを紹介してもらうのもよい、とされています
性暴力の被害については、内閣府によると、全国共通の電話番号「#8891(はやくワンストップ)」にかけると、最寄りの性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにつながります(NTTひかり電話からは 0120-8891-77)。被害のあとの体のケアについては、性暴力の被害にあったらにまとめています。
NCNP は、性的被害や家庭内の虐待などは人に相談しにくく、誰にも相談できずにがまんしている人が少なくないとしたうえで、「一人でがまんせず」「思い切って相談窓口のある施設に連絡をとってみてください」と呼びかけています。
治療
NCNP によると、
- トラウマを扱う認知行動療法が、PTSD の治療でもっとも効果があります。代表的なものに、持続エクスポージャー療法(PE)、認知処理療法(CPT)、眼球運動脱感作療法(EMDR)があります
- こうした特別な治療が受けられなくても、信頼できる先生によく話を聞いてもらい、理解してもらえたと感じるだけでも、ある程度良くなることがあります。まずは自分の話をよく聞いてくれる、信頼できる医師や公認心理師を見つけることが先決です
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬も有効です。うつ病や不安症を併発しているときは、その治療でかなり楽になることがあります
- 抗不安薬はすぐに楽になりますが、PTSD の長い目で見た治療には効果がなく、続けると依存を生じることがあるので注意が必要です
自分でできること:呼吸法
- NCNP は、呼吸法は多くの場合、不安の軽減に有効だとしています。呼吸筋をほぐすストレッチを1日1回、ゆっくり息を吐く呼吸法を1回5分・1日3セット、習慣にすることをすすめています(NCNP 精神保健研究所 行動医学研究部「不安との付き合い方」に実技の動画があります)

プレ男半年たってもつらいなら、相談していいタイミングなんだね。話を聞いてくれる先生を探してみる。
身近な人がつらそうなときは
- 周りの人が様々なこころや体の症状で困っているときは、早めに病院を受診することをすすめてください(厚生労働省 e-ヘルスネット)。受診のしかたは心療内科・精神科のかかり方にまとめています
- 通院を続けるときの医療費は、自立支援医療(精神通院医療)で軽くなることがあります(PTSD などのストレス関連障害も対象)
「消えてしまいたい」「死にたい」と感じるときは、ひとりで抱えずに話してください。厚生労働省「まもろうよ こころ」によると、#いのちSOS(0120-061-338、24時間365日、無料)、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間、無料)などがあります(こころの相談先)。
まとめ
- PTSD は、命の危険などに直面したあと、記憶がよみがえる・神経が張りつめる・思い出す場面をさける・感覚がまひする状態が続く病気
- 精神医療では「ありふれた」病気で、こころが弱いからなるのではない
- 体験の直後の症状は多くが一時的。1か月くらいは様子を見て、数か月続いたり悪くなったりしたら相談
- 性暴力の被害は「#8891」へ。犯罪被害は警察の相談窓口も
- 治療はトラウマを扱う認知行動療法やSSRIなど。まずは信頼できる医師や公認心理師を
参考文献
- 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所. こころの情報サイト:PTSD. https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=iGkwv4PNzgWhQ9xI (閲覧日:2026年10月22日)
- 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 行動医学研究部. 不安との付き合い方. https://www.ncnp.go.jp/nimh/behavior/anxiety/index.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 内閣府男女共同参画局. 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター. https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/consult.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 西大輔. 体の不調はうつ病でも現れます。かかりつけ医へ相談してみましょう. 厚生労働省 e-ヘルスネット(最終更新日:2020年2月13日). https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-07-004.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 厚生労働省. 精神疾患で通院による精神医療を続ける必要がある病状の方に、通院のための医療費の自己負担を軽減する制度があります(自立支援医療(精神通院医療)について). https://www.mhlw.go.jp/content/001507767.pdf (閲覧日:2026年10月22日)
- 厚生労働省. まもろうよ こころ:電話相談. https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/tel/ (閲覧日:2026年10月22日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。