妊娠中の梅毒の治療:飲み薬のペニシリンだけでは赤ちゃんへの感染を防ぎきれないことがあり、日本産婦人科医会の提言は注射(ベンジルペニシリンベンザチン)を積極的にすすめる。妊婦さんは治療のはじめの発熱などが起こりやすく、はじめの注射は入院で
妊娠中に梅毒とわかったら、どんな治療をするのでしょうか。日本産婦人科医会の医会報学術欄「梅毒感染妊婦に対する治療法に関する提言」(医師向け)によると、日本の全国調査(2011〜2018年)では、出産60日以上前から飲み薬のペニシリンで十分に治療しても、赤ちゃんへの感染が14%で起きていました。一方、海外の研究では、持続性ペニシリンの筋肉注射で先天梅毒の98.2%を防げたと報告されています。提言は、母子感染を防ぐために注射を積極的に行うことをすすめています。妊婦さんは治療のはじめの発熱などの反応が40〜50%で起こるとされ、はじめの注射は入院で行うのが望ましいとしています。

メル美妊婦健診で梅毒が見つかった人は、どんな治療を受けるのかな。赤ちゃんにうつらないか、すごく不安だと思う。

プレ男飲み薬と注射があるって聞いたけど、どっちがいいんだろう。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、妊娠中の梅毒の治療の話です。日本産婦人科医会の医会報学術欄「第七回:梅毒感染妊婦に対する治療法に関する提言」(医師向け)をもとにまとめました。妊娠中の梅毒の現状については妊娠中の梅毒が増えている、赤ちゃんへの感染については先天梅毒を見てください。
妊婦さんは、自覚のないまま感染していることも
日本産婦人科医会の提言によると、
- 梅毒にかかった女性のうち、性産業で働いたことがある人は、妊娠していない人では50%ですが、妊婦さんでは20%にも満たず、本人が気づかないところで感染していることに注意が必要だとしています
- 梅毒と届け出られた妊婦さんは、2019年の200人強から2023年には383人にふえ、大都市だけでなく、まわりの地方都市でもふえています
治療はペニシリン
提言によると、
- 妊娠中の梅毒も、ペニシリン系の薬で治療します。飲み薬(アモキシシリン)か、持続性ペニシリンの筋肉注射(ベンジルペニシリンベンザチン)のどちらにするかは、妊婦さんと相談して決めます
- 早期の梅毒は注射1回、感染から1年以上たった後期の梅毒や、いつ感染したかわからない場合は、1週間ごとに3回注射します
飲み薬だけでは防ぎきれないことも
提言によると、
- 日本では長いあいだ、ペニシリンの筋肉注射が梅毒に使えなかったため、飲み薬のペニシリンで治療されてきました
- 2011〜2018年の全国調査では、出産60日以上前から十分に治療された妊婦さん57人でも、赤ちゃんへの感染(母子感染)が14%で起きていました。先天梅毒は、治療を始めてから出産までの期間が短い人に多くみられました
- 妊娠初期の検査で梅毒がわかり、適切に飲み薬を使っていても先天梅毒が起きた例があり、飲み薬だけでは母子感染を防ぎきれないとしています
- 一方、海外の研究では、持続性ペニシリンの注射で先天梅毒の98.2%を防げたと報告されていて、WHOや米国CDCが推奨する唯一の方法です
- そのため提言は、母子感染を防ぐために、注射を積極的に行うことをすすめています

妊娠中の梅毒は、早く見つけて、しっかり治療することで、赤ちゃんへの感染を防ぐことができます。治療の方法は、主治医とよく相談して決めてください。
妊婦さんに起こりやすい反応
提言によると、
- 治療を始めてまもなく(24時間以内)、熱、頭痛、筋肉痛などが出ることがあります(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応)。梅毒の菌が急に死ぬことによる反応で、ペニシリンのアレルギーではありません
- 妊婦さんはこの反応が起こりやすく、40〜50%で起こるともいわれ、おなかの張り(早産の兆候)や赤ちゃんの状態の変化が起こることがあると指摘されています
- そのため、とくにはじめの注射は入院して行うのが望ましく、外来で行う場合も、症状が出たらすぐに受診できる態勢をととのえる必要があるとされています
- 注射した場所の血流が悪くなり、皮膚に障害が出ること(ニコラウ症候群)もあります
- 治療を始めて8日目ごろから薬疹が出ることもあり、どちらも女性に起こりやすいとされています
ペニシリンにアレルギーがあるとき
提言によると、まず本当のペニシリンアレルギーかを確かめます。本当のアレルギーなら、少しずつ薬に体を慣らす脱感作をしてペニシリンを使うのが、より確実だとしています。脱感作ができない場合には、セフトリアキソンを使う意見もあります(「ペニシリンアレルギー」と言われたことがある人の性感染症の治療)。
パートナーの検査と治療については、梅毒は治っても、またかかるを見てください。
まとめ
- 妊娠中の梅毒もペニシリンで治療する。飲み薬か注射かは相談して決める
- 日本の調査では、飲み薬で十分に治療しても母子感染が14%
- 注射は先天梅毒の98.2%を防げたという海外の報告があり、提言は注射を積極的にとすすめる
- 妊婦さんは治療のはじめの発熱などの反応が起こりやすく、はじめの注射は入院で
参考文献
- 公益社団法人日本産婦人科医会. 医会報学術欄(デジタル版)第七回:梅毒感染妊婦に対する治療法に関する提言. https://www.jaog.or.jp/lecture/%e7%ac%ac%e4%b8%83%e5%9b%9e%ef%bc%9a%e6%a2%85%e6%af%92%e6%84%9f%e6%9f%93%e5%a6%8a%e5%a9%a6%e3%81%ab%e5%af%be%e3%81%99%e3%82%8b%e6%b2%bb%e7%99%82%e6%b3%95%e3%81%ab%e9%96%a2%e3%81%99%e3%82%8b%e6%8f%90/ (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
