鼠径肉芽腫(ドノバン症):痛みのない、赤く盛り上がって出血しやすい陰部の潰瘍が、ゆっくり広がる。日本ではまれで、インド・南アフリカ・南米などで散発。治療は長めの抗菌薬
鼠径肉芽腫(そけいにくげしゅ、ドノバン症)は、陰部に潰瘍ができる、まれな性感染症です。米国CDCのガイドラインによると、痛みのない潰瘍がゆっくり広がり、潰瘍は血管が多くて牛肉のように赤く、出血しやすいのが特徴です。足のつけ根のリンパ節は腫れませんが、皮膚の下にしこりができることがあります。インド、南アフリカ、南米などで散発的に報告されています。症状、検査、治療、パートナーのことをまとめました。

プレ男海外旅行から帰ってしばらくして、陰部に赤いただれができたんだ。痛くないけど、だんだん大きくなってる気がする…。

メル美痛くない潰瘍って、梅毒もそうだよね。ほかにどんな病気があるんだろう。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、まれな性感染症のひとつ、鼠径肉芽腫(そけいにくげしゅ)、別名ドノバン症の話です。米国CDCの性感染症治療ガイドライン(2021年)をもとにまとめました。日本ではまれですが、陰部の潰瘍の原因のひとつとして知っておきましょう(陰部潰瘍)。
どんな病気?
CDCによると、
- クレブシエラ・グラヌロマティスという細菌による、陰部に潰瘍ができる病気です
- 米国ではまれで、インド、南アフリカ、南米などで散発的に報告されています。以前はオーストラリアでも見られましたが、いまはきわめてまれです
症状
CDCによると、
- 陰部や会陰(陰部と肛門の間)に、痛みのない潰瘍ができ、ゆっくり広がっていきます
- 潰瘍は血管が多く、牛肉のように赤く、出血しやすいのが特徴です
- 足のつけ根のリンパ節は腫れませんが、皮膚の下にしこり(偽横痃)ができることがあります(足のつけ根のリンパ節の腫れ)
- 感染が骨盤に広がったり、まれにおなかの中の臓器、骨、口に広がったりすることもあります
- 潰瘍にほかの細菌が感染したり、ほかの性感染症と同時にかかっていたりすることもあります

メル美痛くないのに、赤くて出血しやすい潰瘍なんだ。梅毒とも見分けが必要だね。
ほかの「痛くない潰瘍」とのちがい
陰部の痛くない潰瘍では、まず梅毒を考えます(梅毒)。痛い潰瘍では、性器ヘルペスや軟性下疳なども考えます。見た目だけでは区別がむずかしいので、検査が必要です。
検査
- CDCによると、原因の菌は培養がむずかしく、潰瘍の組織をとって顕微鏡で調べ、ドノバン小体という特徴的なものを見つけて診断します
- CDCは、鼠径肉芽腫と診断された人はHIVの検査も受けるべきだとしています(ほかの性感染症があるとHIVにうつりやすい)

陰部の痛くない潰瘍は、まず梅毒を考えますが、海外での接触があれば鼠径肉芽腫のようなまれな病気のこともあります。受診のときは、海外での性行為も伝えてください。
治療
- CDCによると、抗菌薬で治療します。治療で潰瘍の広がりが止まり、潰瘍のふちから内側に向かって治っていきます
- 潰瘍が治るまで、長めの治療(少なくとも3週間以上、潰瘍が完全に治るまで)が必要です
- 治ったように見えても、6〜18か月後に再発することがあるので、症状がなくなるまで経過を見ます
- 妊娠中・授乳中は、使える薬がかぎられます
パートナーのこと
- CDCは、症状が出る前60日以内にセックスしたパートナーは、診察を受けて治療を相談するべきだとしています(パートナーにどう伝える?)
まとめ
- 鼠径肉芽腫(ドノバン症)は、陰部に痛くない潰瘍ができる、まれな性感染症
- 潰瘍は牛肉のように赤く、出血しやすく、ゆっくり広がる。リンパ節は腫れないが、皮膚の下のしこりができることも
- インド・南アフリカ・南米などで散発。海外での接触があれば医師に伝える
- 組織の検査で診断。長めの抗菌薬で治療。再発に注意。HIVの検査も
参考文献
- Workowski KA, et al. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021: Granuloma Inguinale (Donovanosis). MMWR Recomm Rep. 2021;70(4):1-187. https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/rr/rr7004a1.htm (閲覧日:2026年10月5日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
