大日本印刷(DNP)の強みとは:印刷から広がった3部門。出版・販促・ICカードなどの「スマートコミュニケーション」、包装・医薬・電池材料の「ライフ&ヘルスケア」、半導体用フォトマスク・有機EL用メタルマスクの「エレクトロニクス」。2026年3月期は営業利益1,010億円(+7.9%)
大日本印刷を、2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年5月13日)で分析しました。売上高1兆5,125億円(+3.8%)、営業利益1,010億円(+7.9%、営業利益率6.7%)、親会社株主に帰属する当期純利益1,039億円(−6.1%)、ROE8.9%、自己資本比率58.5%。部門別の営業利益は、エレクトロニクス507億円(−11.6%、半導体製造用フォトマスクの設備投資・開発投資で固定費が増加)、スマートコミュニケーション400億円(+15.4%、事業構造改革)、ライフ&ヘルスケア372億円(+56.6%、コストダウンと固定資産の適正化)。紙媒体の市場縮小が続く一方、EUV向けフォトマスクや次世代半導体パッケージ向けのTGVガラスコア基板に投資。政策保有株式の売却と自己株式の取得(507億円)を実施。年40円の配当、2027年3月期は営業利益1,080億円・年41円の予想。富士フイルムHDとの比較と、見ておくべき数字も。売買をすすめるものではありません。

メル美大日本印刷って、本や雑誌を印刷する会社でしょ? 紙の本が減っているのに大丈夫なのかな

プレ男半導体の材料もつくってるらしいよ! 印刷の技術を使ってるんだって
企業分析の連載、70社目は大日本印刷(DNP)です。2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年5月13日)で確認しました。比較には、この連載の富士フイルムホールディングスの強みとはで確認した富士フイルムHDの数字を使っています。
この記事は会社のしくみと数字の解説で、大日本印刷株の売買をすすめるものではありません。目標株価や「買い時」も書きません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
1. ひとことで言うと
出版・販促・ICカードなどの情報コミュニケーション、包装・医薬・電池材料、半導体用フォトマスクなどの電子部材を手がける会社
| 項目(日本基準・連結) | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1兆5,125億円 | +3.8% |
| 営業利益 | 1,010億円 | +7.9% |
| 営業利益率 | 6.7% | 前期 6.4% |
| 経常利益 | 1,192億円 | +2.9% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 1,039億円 | −6.1% |
| ROE(自己資本当期純利益率) | 8.9% | 前期 9.6% |
| 自己資本比率 | 58.5% | 前期 59.2% |
| 配当 | 年40円(配当性向17.0%) |
- 2024年10月1日に1株→2株の株式分割をしています(→株式分割と投資単位)
2. 何で稼いでいるか
| 部門 | 中身(決算短信の記載から) | 売上高 | 営業利益 |
|---|---|---|---|
| エレクトロニクス | 有機EL用メタルマスク、半導体製造用フォトマスク、光学フィルムなど | 2,518億円(+1.6%) | 507億円(−11.6%) |
| スマートコミュニケーション | 出版、販促、コンテンツ・XR、ICカードなど | 7,503億円(+4.9%) | 400億円(+15.4%) |
| ライフ&ヘルスケア | 包装、医療用パッケージ・医薬品の原薬・製剤、電池材料、内装材、飲料 | 5,123億円(+3.3%) | 372億円(+56.6%) |
- 売上はスマートコミュニケーションが半分ですが、利益がいちばん大きいのはエレクトロニクスです(利益率約20%)
3. 強み
会社の資料で確かめられる事実から、強みと考えられる点を挙げます。
① 半導体用フォトマスク
- 半導体関連は市況が堅調で、積極的な投資で前年を上回りました。EUV(極端紫外線)リソグラフィ用のフォトマスクの製造を進め、2026〜2028年度の中期経営計画でも300億円規模の設備投資をするとしています
② 次世代半導体パッケージ
- 次世代半導体パッケージ向けのTGVガラスコア基板のパイロットラインを、2025年12月に久喜工場(埼玉県)で動かし始めました
③ 事業構造改革と株主還元
- 人的資本や固定資産の適正化などの事業構造改革で、スマートコミュニケーションとライフ&ヘルスケアが増益でした。政策保有株式の売却と、計画的な自己株式の取得(507億円)も進めています(→自社株買いのしくみ)
4. 弱み・リスク
① 紙媒体の縮小
- 販促分野では紙媒体の市場縮小の影響があり、出版関連でも雑誌などの市場縮小の影響を受けました
② エレクトロニクスの固定費
- エレクトロニクスは、為替の影響と、フォトマスクの設備・開発投資で固定費が増え、減益でした。有機EL用メタルマスクは、半導体メモリ不足によるスマートフォンの減産の影響も受けました
③ 営業キャッシュ・フローの減少
- 営業活動によるキャッシュ・フローは403億円(前期1,327億円)に減りました
5. ライバルとの比較
印刷・写真から事業を広げてきた富士フイルムホールディングスと比べます。会計基準(富士フイルムは米国基準)が違うので、おおまかな比較です。どちらも2026年3月期です。
| 大日本印刷 | 富士フイルムHD | |
|---|---|---|
| 売上高 | 1兆5,125億円(+3.8%) | 3兆3,570億円(+5.0%) |
| 営業利益 | 1,010億円(+7.9%) | 3,502億円(+6.1%) |
| 営業利益率 | 6.7% | 10.4% |
| 半導体の材料 | フォトマスク、ガラスコア基板 | 半導体材料(先端レジストなど) |
- どちらも半導体向けの材料を伸ばしています。規模と利益率は富士フイルムHDが上回ります(→富士フイルムホールディングスの強みとは)。同業のTOPPANは、今回の確認方法で決算短信のPDFに届かなかったため比べていません
6. 投資プレイヤー的チェックポイント
大日本印刷の決算を見るときに、毎回確かめておきたい数字です(売買の判断基準ではありません)。
| 見ておく数字 | 2026年3月期 | どこに書いてある |
|---|---|---|
| エレクトロニクスの営業利益 | 507億円 | 決算短信(部門別) |
| 自己株式の取得・政策保有株式の売却 | 自己株式の取得507億円、投資有価証券の売却収入578億円 | 決算短信(キャッシュ・フロー) |
| ROE | 8.9% | 決算短信のサマリー |
| 会社の業績予想 | 2027年3月期 売上高1兆5,300億円、営業利益1,080億円 | 決算短信のサマリー |
| 配当 | 年40円、2027年3月期予想41円 | 決算短信 |
- 指標の読み方はPER・PBR・ROE・配当利回りの見方へ。資本効率の改善は東証の「資本コストや株価を意識した経営」の要請も

メル美紙の仕事は減っているけど、半導体のフォトマスクがいちばん稼いでいるのね。持ち合い株を売って、自社株買いもしているんだ
印刷から事業を広げた会社はTOPPANホールディングスの強みとはも参考にしてください。
まとめ
- 大日本印刷は、スマートコミュニケーション・ライフ&ヘルスケア・エレクトロニクスの3部門の会社
- 2026年3月期は営業利益1,010億円(+7.9%)
- 利益がいちばん大きいのはエレクトロニクス(フォトマスクなど、507億円)
- 事業構造改革でほかの2部門が増益、政策保有株式の売却と自社株買いも
- 課題は紙媒体の縮小とエレクトロニクスの固定費
参考文献
- 大日本印刷. 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年5月13日). https://www.dnp.co.jp/ir/ir-file/pdf/dnp_FY25Q4fin.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 富士フイルムホールディングス. 2026年3月期 決算短信〔米国基準〕(連結)(2026年5月12日). https://ir.fujifilm.com/ja/investors/ir-news/auto_20260508520206/pdfFile.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は投資についての一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。