肥満症の注射薬が保険で使える条件:高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のどれかがあり、BMI35以上、またはBMI27以上で健康障害が2つ以上。6か月以上の食事・運動療法のあとに、決められた施設で、最大68〜72週
厚生労働省の「最適使用推進ガイドライン」(セマグルチド:令和5年11月、令和8年6月改訂/チルゼパチド:令和7年3月、令和8年5月改訂)によると、肥満症の注射薬の対象は、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかがあり、BMI35以上、またはBMI27以上で肥満に関連する健康障害が2つ以上ある人。施設の食事・運動療法を6か月以上(2か月に1回以上の栄養指導つき)行っても効果が不十分な場合に限られ、専門医のいる施設で、投与は最大68週(チルゼパチドは72週)です。美容・痩身目的での使用はしないこととされています。

プレ男会社の先輩、体重100kg超えで血圧も高いんだ。「やせる注射が保険で打てるらしい」って言ってたけど、だれでも打てるの?

メル美ダイエット目的の注射とはちがうよね。保険で使える条件があるんじゃないかな。
こんにちは、Dr. Taro です。 「メンズメディカル」のダイエット外来から、今回は肥満症の注射薬が保険で使える条件の話です。厚生労働省の「最適使用推進ガイドライン」の、セマグルチド(肥満症)(令和5年11月、令和8年6月改訂)とチルゼパチド(肥満症)(令和7年3月、令和8年5月改訂)をもとにまとめました。
「肥満」と「肥満症」はちがう
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肥満は、BMI(体重kg÷身長mの2乗)が25以上の状態です(BMIいくつから「肥満」?)
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肥満症は、肥満に、肥満が原因、または肥満と関係する健康障害があり、医学的に減量が必要な状態で、病気として治療の対象になります
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今回の注射薬は「肥満症」の治療薬で、美容・痩身・ダイエットの目的では使わないこととされています
保険で使える人(投与の対象)
ガイドラインでは、次のすべてを満たす肥満症の人が対象です。保険で使うときも、このガイドラインに従うよう、厚生労働省が留意事項を通知しています。
- 高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のどれか1つ以上と診断されていて、さらに次のどちらか
- BMIが35以上
- BMIが27以上で、肥満に関連する健康障害が2つ以上ある
- 薬を出す施設で、食事療法・運動療法の治療計画に沿った治療を6か月以上行っても十分な効果がない。その間、2か月に1回以上、管理栄養士の栄養指導を受けている
- 高血圧・脂質異常症・2型糖尿病に対して、薬を含む適切な治療がすでに行われている
肥満に関連する健康障害としてあげられているもの(セマグルチドのガイドライン):
- 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)、脂質異常症、高血圧
- 高尿酸血症・痛風(尿酸値が高い)
- 冠動脈疾患、脳梗塞
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(脂肪肝)
- 月経異常・不妊
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群(睡眠時無呼吸)
- 運動器の病気、肥満に関連する腎臓病

プレ男まず6か月、病院で食事と運動の治療をがんばるのが先なんだ。
どこで受けられる?(施設の条件)
ガイドラインでは、次のような条件をすべて満たす施設で使うべきとされています(主なもの)。
- 内科、循環器内科、内分泌内科、代謝内科、糖尿病内科を標榜する保険医療機関
- 日本循環器学会・日本糖尿病学会・日本内分泌学会のいずれかの専門医の常勤医師が1人以上いて、学会の教育研修施設に認定されている
- 常勤の管理栄養士による栄養指導ができる
- 副作用が出たときに、すぐに適切な対応ができる体制がある
治療の期間と、やめるタイミング
- 薬を使っている間も、食事療法・運動療法を続け、2か月に1回以上の栄養指導を受けます
- 投与は最大68週(チルゼパチドは最大72週)。日本人の臨床試験の期間にもとづく上限で、この期間までにやめられるよう指導することになっています
- 毎月、体重・血糖・血圧・脂質などを確認し、3〜4か月使っても改善しなければ中止
- 十分にやせた場合は、68週(72週)を待たずに中止して、食事・運動療法だけでの管理を考えます
- やめたあとに悪くなった場合も、原則として、もう一度6か月以上の食事・運動療法をしてから再開を検討します

肥満症の注射薬は、決められた条件と施設で、食事療法・運動療法と組み合わせて使う薬です。美容やダイエットの目的では使わないこととされています。
使えない人・注意が必要な人(一部)
- 妊娠中・妊娠している可能性のある人には使いません。2か月以内に妊娠を予定している人は中止します(セマグルチド)
- すい炎になったことがある人、重い胃腸の病気がある人などは、慎重に判断します
- 嘔吐をともなう激しい腹痛が続くなど、急性すい炎の初期症状が出たら、使用をやめてすぐに受診します(飲みすぎとすい炎)
- 下痢・嘔吐から脱水になり、腎臓が傷むおそれ、胆石・胆のう炎などにも注意が必要です
- ほかのGLP-1受容体作動薬などと一緒に使わないこととされています
自由診療の「やせる注射」とのちがい
- 糖尿病の薬などを美容・痩身の目的で使う自由診療の問題点と、厚生労働省の注意喚起は「やせる注射・飲み薬」の注意にまとめています
- オンライン診療での定期購入トラブルも報告されています(AGAのオンライン診療と定期購入トラブル)
- まずは食事・運動で体重の3%を落とすことからでも、健康上の効果が期待できます(メタボの基準と3%減量)

メル美先輩には、まずかかりつけの内科で相談してみてって伝えたら?
まとめ
- 肥満症の注射薬(セマグルチド、チルゼパチド)は、肥満症の治療薬。美容・痩身目的では使わない
- 対象は、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のどれかがあり、BMI35以上、またはBMI27以上で健康障害2つ以上
- 先に6か月以上の食事・運動療法(2か月に1回以上の栄養指導)
- 専門医・管理栄養士のいる施設で、最大68週(チルゼパチドは72週)。3〜4か月で改善しなければ中止
参考文献
- 厚生労働省. 最適使用推進ガイドライン セマグルチド(遺伝子組換え)〜肥満症〜(令和5年11月、令和8年6月改訂). https://www.pmda.go.jp/files/000281140.pdf (閲覧日:2026年10月4日)
- 厚生労働省. 最適使用推進ガイドライン チルゼパチド〜肥満症〜(令和7年3月、令和8年5月改訂). https://www.pmda.go.jp/files/000280607.pdf (閲覧日:2026年10月4日)
- 厚生労働省保険局医療課長. 肥満症の効能又は効果を有するセマグルチド(遺伝子組換え)製剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項について(令和5年11月21日 保医発1121第2号). https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc8062&dataType=1&pageNo=1 (閲覧日:2026年10月4日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。