目次

メル美母が更年期でつらくて、ホルモン補充療法をすすめられたんだって。でも「がんにならない?」って心配してて。

プレ男ぼくの母も同じくらいの年だ。どんな治療なのか、ちゃんと知っておきたいな。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、ホルモン補充療法(HRT)のよくある疑問の話です。一般社団法人日本女性医学学会の一般向け冊子「ホルモン補充療法の正しい理解をすすめるために」(2023年10月、ホルモン補充療法ガイドラインにもとづくもの)と、日本産婦人科医会の「女性の健康Q&A」(2017〜2018年作成)をもとにまとめました。更年期そのものについては、女性の更年期の記事を見てください。
HRTとは
日本産婦人科医会によると、
- HRTは、減った女性ホルモン(卵胞ホルモン=エストロゲン)を補う治療です
- エストロゲンには子宮内膜を厚くする作用があるので、それをおさえるために、子宮がある人は黄体ホルモンも一緒に使います。子宮をとっている人は、エストロゲンだけを使います
- 効果として、ほてり・発汗・動悸・冷えの改善、眠れない・気分が落ちこむ人への助け、尿もれ・性交痛の改善、骨粗しょう症や動脈硬化の予防などが挙げられています(腟の乾燥・性交痛、骨粗しょう症)
- 更年期障害が強いときは、閉経前から始めることもあります
Q. 始めてから、ときどき出血します
- 日本女性医学学会の冊子によると、子宮がある人の40〜60%に不正出血がみられます。とくに始めてすぐ(3か月くらい)に多く、半年〜1年で消えることが多いです
- 出血が多いときは、エストロゲンの量の調整で減らせることもあります
- 出血量が多いとき、始めて6か月以上たっても出血が続くときは、子宮内膜の検査を受けるのがよいとされています
- 日本産婦人科医会も、出血の量や期間を主治医に伝えることが大切で、ときに悪い病気が見つかることもあるとしています(閉経後の出血)
Q. 乳房が張って痛みます
- 日本産婦人科医会によると、乳房の張りや痛みは、不正出血と同じようによくある副作用です。続けているうちになくなることが多く、長く続くときはホルモンの量を減らすなどの対策をします
- 冊子は、主な副作用として不正出血、乳房の張りや痛み、おなかの張り、吐き気、おりものを挙げ、徐々に軽くなることが多いとしています

プレ男出血や乳房の張りは、よくある副作用なんだ。でも続くときは、ちゃんと伝えるのが大事なんだね。
Q. 乳がんにならない?
日本女性医学学会の冊子によると、
- 最近の研究で、HRTによる乳がんのリスクは案外低いことがわかってきました
- HRTが5年未満なら、HRTをしない人と比べて明らかな差はありません
- 5年以上続けた場合でも、お酒・たばこ・肥満など生活習慣によるリスクと同じくらいかそれ以下と報告されています。併用する黄体ホルモンの種類によってもリスクがちがいます
- HRTと関係なく、女性の9人に1人が乳がんになります。HRTをしてもしなくても、定期的に乳がん検診を受けましょう(乳がん検診)
日本産婦人科医会によると、以前はHRTで子宮体がんやその前段階が増えたことがありましたが、今は黄体ホルモンを一緒に使うため、子宮体がんは増えません(子宮体がん)。
Q. 心筋梗塞になりやすくならない?
日本女性医学学会の冊子によると、
- HRTを閉経後10年未満、または60歳未満で始めると、心筋梗塞のリスクは減ることが示されています
- 一方、閉経後10年以上、または60歳以上で始めると、その予防効果はなくなり、脳卒中や深部静脈血栓症のリスクはむしろ増えることが多くの研究で示されています
- 60歳を過ぎて初めてHRTを始めることもできますが、症状の改善というメリットがリスクを上回る場合に限られ、慎重に検討する必要があります
- 閉経前後で更年期症状に悩んでいるときは、その時点で始めることが、HRTをより安全に、効果を最大限に生かすことにつながるとされています

HRTは、始める時期で安全性が変わります。更年期症状でつらいときは、ひとりで悩まず早めに産婦人科へ。続けている間は乳がん検診も忘れずに。
Q. どのくらい続ければいい?急にやめてもいい?
- 日本産婦人科医会によると、ほてり・発汗・冷えなどは2週間くらいで効きはじめ、3か月くらいで多くの症状がよくなります。不眠・いらいら・憂うつ感は、人によって効き方がちがいます
- 日本女性医学学会の冊子によると、HRTを「〇歳まで」「〇年間で」やめなければならないという一律の決まりはありません。5年でやめなければならないわけではありません
- ただし、漫然と続けず、少なくとも1年に1度は、自分にとってのメリットが、リスクや負担(費用も含む)を上回っているかを医師と話し合いましょう
- 日本産婦人科医会によると、途中で急にやめると、症状がぶり返すことがあります。HRTで症状をおさえながら、体をホルモンが少ない状態に慣らしていくようにします
Q. HRTでも気分の落ちこみがよくなりません
- 日本産婦人科医会によると、不眠・いらいら・不安・憂うつなどは、生活環境や性格などに女性ホルモンの減少が重なって起こると考えられ、HRTだけではよくならないことがよくあります
- そんなときは、カウンセリングや、睡眠薬、抗うつ薬、漢方薬などで、ずいぶん楽になります。こころの薬はHRTと一緒に使っても心配はありません。主治医に相談しましょう
HRTを受けられない人
- 乳がんにかかっている・かかったことがある人、原因のわからない不正出血がある人、血栓症・心筋梗塞・脳卒中にかかったことがある人などは、HRTを受けられない、または慎重に考える必要があります。くわしくは女性の更年期の記事を見てください
(更新)日本産婦人科医会の産婦人科ゼミナール「7.質問!『HRTを本当にいつまでも続けてよいですか?』」(医師向けの連載)で確認しました。「ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版」の序文のとおり、現在ではHRTの投与継続を制限する一律の年齢や投与期間はないとされています。そのうえで、薬は「必要最少量と最短期間」が大原則なので、臨床研究で設定された5年間や60歳以上などにこだわらず、毎年、再評価して継続か減量を検討するのが実際的だとしています。なお、ガイドラインは2025年度版が出ていますが、この記事では確認していません
40代以降の避妊と、避妊をやめる時期については、40代からの避妊にまとめています。
更年期の関節の痛みについては、更年期の関節の痛みにまとめています。
まとめ
- HRTは減った女性ホルモンを補う治療。子宮がある人は黄体ホルモンも一緒に
- 不正出血・乳房の張りはよくある副作用。多くは徐々に減るが、続くときは相談
- 乳がんのリスクは5年未満なら明らかな差なし。乳がん検診は定期的に
- 閉経後10年未満・60歳未満に始めるとより安全
- 続ける期間に一律の決まりはない。年に1度は見直し、急にやめない
参考文献
- 一般社団法人日本女性医学学会. ホルモン補充療法の正しい理解をすすめるために(ホルモン補充療法ガイドラインより)(2023年10月、PDF). https://www.jmwh.jp/pdf/hrt_guide_book.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 日本産婦人科医会. ホルモン補充療法(HRT)の効果には、どのようなものがありますか?(2017年10月25日作成). https://www.jaog.or.jp/qa/menopause/kounenki04/ (閲覧日:2026年10月10日)
- 日本産婦人科医会. ホルモン補充療法(HRT)の目的を教えてください(2017年11月1日作成). https://www.jaog.or.jp/qa/menopause/kounenki05/ (閲覧日:2026年10月10日)
- 日本産婦人科医会. ホルモン補充療法をはじめてから、ときどき出血します。続けても大丈夫ですか?(2017年11月15日作成). https://www.jaog.or.jp/qa/menopause/kounenki07/ (閲覧日:2026年10月10日)
- 日本産婦人科医会. ホルモン補充療法をはじめたら、乳房が張って痛むことがあります。続けても大丈夫ですか?(2017年11月22日作成). https://www.jaog.or.jp/qa/menopause/kounenki08/ (閲覧日:2026年10月10日)
- 日本産婦人科医会. ホルモン補充療法を続けても、不眠や気分の落ち込みはあまり変わりません。ほかに治療法はありませんか?(2017年11月29日作成). https://www.jaog.or.jp/qa/menopause/kounenki09/ (閲覧日:2026年10月10日)
- 日本産婦人科医会. ホルモン補充療法はどのくらい続けたらいいですか?(2017年12月6日作成). https://www.jaog.or.jp/qa/menopause/kounenki10/ (閲覧日:2026年10月10日)
- 日本産婦人科医会. ホルモン補充療法を急に中止するとどうなりますか?(2017年12月13日作成). https://www.jaog.or.jp/qa/menopause/kounenki11/ (閲覧日:2026年10月10日)
- 日本産婦人科医会. ホルモン補充療法は閉経前からはじめられますか?(2017年12月20日作成). https://www.jaog.or.jp/qa/menopause/kounenki12/ (閲覧日:2026年10月10日)
- 日本産婦人科医会. ホルモン補充療法を長く続けるとがんになるのではと不安です。(2017年12月27日作成). https://www.jaog.or.jp/qa/menopause/kounenki13/ (閲覧日:2026年10月10日)
- 公益社団法人日本産婦人科医会. 産婦人科ゼミナール Dr石谷の女性医学四方山話 7.質問!「HRTを本当にいつまでも続けてよいですか?」. https://www.jaog.or.jp/lecture/7-%E8%B3%AA%E5%95%8F%EF%BC%81%E3%80%8Chrt%E3%82%92%E6%9C%AC%E5%BD%93%E3%81%AB%E3%81%84%E3%81%A4%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%82%82%E7%B6%9A%E3%81%91%E3%81%A6%E3%82%88%E3%81%84%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B/ (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。