骨盤内炎症性疾患(PID)とは?下腹部の痛みや熱。クラミジアや淋菌が子宮の奥まで広がると、不妊や子宮外妊娠の原因に
クラミジアや淋菌などが、子宮の入り口から子宮・卵管・おなかの中へと広がって起こるのが骨盤内炎症性疾患(PID)です。症状が軽い・ないことも多い一方、米国CDCによると、PIDになった女性の8人に1人は妊娠しにくくなるといいます。症状、治療、パートナーのこと、予防をまとめました。

メル美最近、下腹部がずっと痛くて、エッチのときも痛いの。生理痛とはちょっと違う気がする…。

プレ男心配だね。性感染症のこともあるかもしれないし、2人で一緒に調べよう。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、女性の骨盤内炎症性疾患(PID)の話です。あまり聞きなれない名前ですが、将来、妊娠できるかどうかにも関わる、大事な病気です。
どんな病気?
- 米国CDCによると、PIDは、子宮の内側(子宮内膜)、卵管、卵巣のまわり、おなかの中(骨盤の腹膜)など、子宮の入り口より奥に起こる炎症をまとめた呼び方です
- 多くは、子宮の入り口(子宮頸管)の感染が、奥へ広がって起こります。原因は、淋菌、クラミジアのほか、マイコプラズマ・ジェニタリウムや、腟の中にいる菌などです。細菌性腟症をともなうことも多いとされています
- ただし、PIDの患者さんで淋菌やクラミジアが見つかるのは約半分です

メル美入り口の感染が、奥まで広がっちゃうんだ…。
症状:軽い・ないことも多い
CDCがあげている、気をつけたい症状です。
- 下腹部の痛み
- 熱
- いつもとちがう、においの強いおりもの
- セックスのときの痛みや出血
ただし、CDCは、PIDは症状が軽かったり、はっきりしなかったり、まったくなかったりすることが多いとしています。そして、症状が軽くても、不妊の原因になりうると注意しています。
症状から自分で病名を決めることはできません。気になる症状があれば、婦人科を受診しましょう。
下腹部の痛みには、PID以外にもいろいろな原因があります(下腹部(骨盤)の痛み)。
放っておくと、どうなる?
- 炎症で卵管が傷つくと、不妊、子宮外妊娠、長く続く骨盤の痛みの原因になります
- CDCによると、PIDになったことがある女性の8人に1人が、妊娠しにくくなるといいます
- 卵管や卵巣のまわりにうみのかたまり(膿瘍)ができることもあり、その場合は入院が必要になります
治療
- 診察で、下腹部の痛みに加えて、子宮やそのまわりを押したときの痛みなどがあれば、CDCはPIDとして早めに治療を始めることをすすめています
- 治療は抗菌薬を14日間。淋菌、クラミジア、腟の中の菌などをまとめて治療できるよう、セフトリアキソンの注射に、ドキシサイクリンとメトロニダゾールの飲み薬を組み合わせる方法などが、CDCのガイドラインで示されています
- 治療を始めて3日(72時間)以内によくならないときは、入院なども含めて、もう一度くわしく調べます
- 重い場合、うみのかたまりがある場合、妊娠中の場合などは、入院して治療します
- IUD(子宮内避妊具)を使っている人がPIDになっても、すぐに抜く必要はないとCDCはしています。48〜72時間たってもよくならなければ、抜くことを考えます(IUD・インプラント)
パートナーも、検査と治療を
- CDCは、症状が出る前の60日間のパートナーに、原因の菌がなんであっても、クラミジアと淋菌の検査・治療をすすめています
- パートナーが治療しないと、治ってもまたうつる(ピンポン感染)ことがあります
- 2人とも治療が終わるまで、セックスはお休みしましょう

プレ男オレも検査に行くよ。症状がなくても、うつってるかもしれないもんね。
予防
- コンドームを最初から最後まで正しく使う(コンドームの正しい使い方)
- クラミジアや淋菌を早く見つけて治すことが、PIDの予防になります。症状がなくても、パートナーが変わったときなどは検査を

PIDは、症状が軽くても不妊の原因になることがあります。クラミジアや淋菌を早く見つけて治すことが、いちばんの予防です。
まとめ
- PIDは、クラミジアや淋菌などが子宮・卵管・おなかの中まで広がって起こる炎症
- 症状が軽い・ないことも多いが、不妊・子宮外妊娠の原因に(PIDになった女性の8人に1人が妊娠しにくくなる)
- 下腹部の痛み、熱、いつもとちがうおりもの、セックスのときの痛みがあれば婦人科へ
- 治療は抗菌薬を14日間。パートナーも検査・治療を
参考文献
- Centers for Disease Control and Prevention. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021: Pelvic Inflammatory Disease (PID). https://www.cdc.gov/std/treatment-guidelines/pid.htm (閲覧日:2026年9月29日)
- Centers for Disease Control and Prevention. About Pelvic Inflammatory Disease (PID). https://www.cdc.gov/pid/about/index.html (閲覧日:2026年9月29日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。