男性同士のセックスと性の健康:性器だけの検査では、淋菌・クラミジアの約7割を見のがすことも。のど・おしりの検査、年1回以上(人によっては3〜6か月ごと)の検査、A型・B型肝炎とHPVのワクチン、PrEPなど、できる予防はたくさんある
男性と性交する男性(MSM)の性の健康についてまとめました。日本では、新しく報告されたHIVの感染経路の61.0%が同性間の性的接触です(2025年)。米国CDCのガイドライン(2021年)によると、のどやおしり(直腸)の淋菌・クラミジアは症状がないことが多く、性器だけを検査すると約7割を見のがすおそれがあります。HIV・梅毒・淋菌・クラミジアの検査を少なくとも年1回、リスクが続く人は3〜6か月ごとに。A型・B型肝炎のワクチン、26歳までのHPVワクチン、PrEPなど、予防の手段もたくさんあります。

プレ男ゲイの友だちが、「検査は尿だけじゃなくて、のどやおしりも受けたほうがいいって聞いた」って言ってたんだ。どういうこと?

メル美セックスのしかたによって、どこを検査するかが変わるんだね。知っておくと、自分に合った検査が選べそう。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、男性同士のセックスと性の健康の話です。米国CDCの「性感染症治療ガイドライン2021」の「男性と性交する男性(MSM)」の章などをもとにまとめました。
「MSM」とは
CDCのガイドラインによると、
- MSM(男性と性交する男性)は、医療の場で性行動をさす言葉として使われ、性的指向とは関係ありません(たとえば、自分を異性愛者と考えている人もふくまれることがあります)
- 性的指向と性自認は別のものなので、診察では、本人とパートナーの性的指向や性自認をたずねることが大切だとしています
性感染症は、誰と、どんなセックスをするかによって、うつりやすさや検査する場所が変わります。この記事は、特定の人たちを責めるためのものではなく、自分に合った検査と予防を選ぶためのものです。
日本のデータ
- 厚生労働省エイズ動向委員会によると、2025年に新しく報告されたHIVの感染経路は、同性間の性的接触が61.0%でした(数字で見る日本のHIV(2025年))
- 日本性感染症学会の2026年10月のお知らせでは、2026年に入ってA型肝炎の報告が増え、とくに男性間の性交渉による感染が増えているとされています(2026年9月の速報)
のど・おしりの検査が大切
CDCのガイドラインによると、
- おしり(直腸)とのどの淋菌・クラミジアは、ほとんど症状がありません
- MSMで性器(尿)だけの検査をすると、淋菌とクラミジアの感染の約70%を見のがすおそれがあるとされています
- そのため、どこで性的な接触があったか(口・おしり・性器)をもとに、のど・直腸の検査も行うことがすすめられています。綿棒で自分で検体をとる方法も受け入れられているとしています
- 直腸の淋菌・クラミジアはHIVの感染と関係があり、のどの淋菌・クラミジアは尿道の感染のおもな感染源になっている可能性があります

検査のときは、どこで性的な接触があったか(口・おしり・性器)を伝えてください。それによって、どこを検査するかが決まります。医療者は責めるために聞くのではありません。
どれくらいの頻度で検査する?
CDCのガイドラインによると、
- すべてのMSMに、HIV、梅毒、淋菌・クラミジアの検査を、少なくとも年1回行うことがすすめられています
- パートナーが多い、匿名のパートナーがいるなど、リスクが続く人では、3〜6か月ごとの検査がすすめられています
- PrEPを使っている人では、細菌性の性感染症が多いことが報告されていて、頻繁な検査が必要とされています(少なくとも3か月ごと)
- 梅毒のくり返しの感染も多いとされています(梅毒は治っても、またかかる)
検査の頻度については、性感染症の検査、どれくらいの頻度で受ける?も見てください。
ワクチンで防げるもの
CDCのガイドラインによると、
- A型肝炎とB型肝炎:かかったことやワクチンを受けたことが確認できないすべてのMSMに、ワクチンがすすめられています(A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン)
- HPV:26歳までのすべての男性(MSMやHIVのある人をふくむ)に、HPVワクチンがすすめられています(HPVワクチン、肛門がんとHPV)
(更新)国立健康危機管理研究機構の「日本で接種可能なワクチンの種類」(2026年4月現在)では、A型肝炎ワクチン、HPVワクチン(2価・4価)、エムポックス(曝露リスクの高い方)のワクチンは任意接種です。B型肝炎ワクチンとHPVワクチン(9価)は定期接種に分類されていますが、定期接種は対象年齢が政令で決まっていて、対象年齢以外で受ける場合は任意接種になります(HPVワクチンの定期接種は女性が対象で、男性は2026年7月の審議会の時点で定期接種になっていません。HPVが原因のがんは、世界で年69万件(WHO)の(更新)を参照)。費用や自治体の助成は確認していません。
そのほかの予防
- コンドーム:HIVやほかの性感染症を防ぐ基本です(コンドーム)
- PrEP(曝露前予防):CDCのガイドラインでは、HIVの感染を防ぐ薬として、MSMでも効果が示されているとしています(PrEP)
- PEP(曝露後予防):心配な性行為から72時間以内に始める方法です(PEP)
- ドキシペップ:細菌性の性感染症の予防として、米国CDCが2024年に使い方の指針を出しています(ドキシペップ)
気をつけたい症状
CDCのガイドラインは、医師がたずねるべき症状として、尿道から膿が出る、排尿時の痛み、潰瘍、発疹、リンパ節の腫れのほか、おしりの症状(分泌物、出血、排便時の痛み、アナルセックスのときの痛み)をあげています。おしりの症状については、直腸炎を見てください。
まとめ
- 日本の新しいHIVの報告の61.0%は同性間の性的接触(2025年)
- のど・おしりの淋菌・クラミジアは症状がないことが多い。性器だけの検査では約7割を見のがすことも
- 検査は少なくとも年1回、リスクが続く人は3〜6か月ごと
- A型・B型肝炎、HPV(26歳まで)のワクチン
- コンドーム、PrEP、PEPなど、予防の手段はたくさんある
参考文献
- Workowski KA, et al. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021(Men Who Have Sex with Men). MMWR Recomm Rep. 2021;70(4):1–187. https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/rr/rr7004a1.htm (閲覧日:2026年10月10日)
- 厚生労働省エイズ動向委員会. 令和7(2025)年エイズ発生動向 ―分析結果―(PDF). https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/data/2025/nenpo/bunseki.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 日本性感染症学会. A型肝炎に関する医療機関向け臨時セミナーのお知らせ(2026年10月8日、PDF). https://jssti.jp/pdf/n20261008.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 国立健康危機管理研究機構. 日本で接種可能なワクチンの種類(2026年4月現在). https://id-info.jihs.go.jp/immunization/basics/vaccine-list-in-japan/index.html (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
