性感染症の言葉ガイド:STIとSTD、ウインドウ期、潜伏期間、核酸増幅検査、抗体と抗原、キャリア、定点報告と全数報告、PrEP・PEP、U=U。検査や説明でよく出る言葉をやさしく
性感染症の説明や検査結果には、むずかしい言葉がたくさん出てきます。STIとSTDのちがい、感染してすぐは検査で見つからない「ウインドウ期」、遺伝子を調べる「核酸増幅検査」、「抗体」と「抗原」、ウイルスをもち続ける「キャリア」、統計の「定点報告」と「全数報告」、HIVを薬で防ぐ「PrEP」「PEP」、治療でウイルスをおさえれば性行為でうつさない「U=U」など、よく出る言葉を一次資料にもとづいてまとめました。

プレ男検査の説明で「ウインドウ期」とか「抗体」とか言われて、よくわからなかったんだ……。

メル美言葉の意味がわかると、結果の見方もわかりやすくなるよね。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、性感染症の説明や検査でよく出てくる言葉をまとめました。それぞれの出典と、くわしい記事へのリンクもつけています。
病気の呼び方
STI と STD
- 日本産婦人科医会によると、性感染症は英語でSTI(Sexually Transmitted Infections)といいます。以前はSTD(D=Diseases、病気)と言っていましたが、クラミジアやHIVのように症状がないまま感染を広げてしまうことがあるため、最近はSTIを使うことが多くなりました(性病かも?何科に行けばいい?)
時間に関する言葉
潜伏期間
- 感染してから症状が出るまでの期間です。病気によってちがいます(性感染症は、感染してから何日で症状が出る?)
ウインドウ期
- 日本赤十字社によると、HIVやB型・C型肝炎のウイルスには、感染してすぐは強い感染力があるのに、もっとも鋭い検査法でも見つけられない時期があり、これをウインドウ期といいます(献血をHIV検査の代わりにしないで)

プレ男ウインドウ期は、うつっていても検査で見つからない時期なんだ。だから検査の時期が大事なんだね。
検査に関する言葉
核酸増幅検査(NAAT)
- 菌やウイルスの遺伝子を増やして調べる検査です。米国CDCによると、クラミジアの検査に最適な検体は、男性は出始めの尿、女性は腟のぬぐい液です(性感染症の検査って何をするの?)
抗体と抗原
- 抗体は、感染したときに体がつくる防御の物質、抗原は病原体そのものの一部です
- たとえば、C型肝炎では、抗体が陽性でも、いまウイルスがいるとは限らないので、ウイルスそのもの(HCV RNA)を調べます(日本肝臓学会)(C型肝炎と妊娠)
- B型肝炎では、HBs抗原が陽性だとウイルスに感染していることを示します(厚生労働省のリーフレット)(B型肝炎の検査結果)
スクリーニング検査と確認検査
- HIVの検査は、一次検査(スクリーニング検査)と二次検査(確認検査)の順に行い、確認検査の陽性で診断が確定します。一次検査の陽性は「感染している可能性が完全には否定できない」という意味です(厚生労働科学研究班)(HIVと妊娠、HIV検査で「陽性」「要確認」と言われたら)
偽陽性
- 本当は感染していないのに、検査で陽性と出ることです。妊婦のHIVの一次検査では、陽性150人のうち146人が偽陽性という説明があります(厚生労働科学研究班)
感染の状態に関する言葉
キャリア
- 病原体に感染した状態が続いている人のことです。日本産婦人科医会や肝炎情報センターの資料では、B型肝炎やC型肝炎で使われています(B型肝炎と妊娠)
母子感染
- 妊娠中・お産のとき・授乳で、お母さんから赤ちゃんにうつることです(妊婦健診で調べる感染症)

言葉がわかると、検査の結果も、医師の説明も、ぐっとわかりやすくなります。わからない言葉は、その場で遠慮なく聞いてくださいね。
予防や治療に関する言葉
PrEP と PEP
- PrEP(曝露前予防):HIVに感染するリスクが高い人が、前もって薬を飲んで防ぐ方法(PrEP)
- PEP(曝露後予防):HIVに感染したかもしれない行為のあと、72時間以内に飲み始めて防ぐ方法(PEP)
- Doxy-PEP:性行為のあとに抗菌薬を飲んで、一部の細菌の性感染症を防ぐ方法(Doxy-PEP)
U=U
- Undetectable = Untransmittable(検出されない=うつさない)の略です。HIVの治療中で、血液中のウイルス量が検出限界未満に6か月以上おさえられていれば、性行為でほかの人にうつすことはないとされています(厚生労働科学研究班)(HIV)
統計に関する言葉
定点報告と全数報告
- 定点報告:全国の決められた医療機関(2024年は981か所)からの報告。国内のすべての患者の数ではありません。性器クラミジア、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、淋菌はこの方法です
- 全数報告:診断したすべての医師が届け出る方法。梅毒、HIVなどはこの方法です
- くわしくは、数字で見る日本の性感染症(2024年)の記事を見てください
(更新)厚生労働省の「感染症法に基づく医師の届出」の後天性免疫不全症候群の届出基準で確認しました。HIV感染症をふくむ後天性免疫不全症候群は、患者(確定例)だけでなく無症状病原体保有者も、診断した医師が法第12条第1項の規定により7日以内に届け出ることになっています。厚生労働省の「感染症法の対象となる感染症の分類と考え方」でも、五類感染症のうち、診断した医師に届出を義務づけるものが全数把握と説明されています
まとめ
- STIは最近の呼び方。症状がない感染もふくむ
- 潜伏期間は症状が出るまで、ウインドウ期は検査で見つからない時期
- 核酸増幅検査は遺伝子を調べる検査。抗体と抗原はちがうもの
- スクリーニング検査の陽性は確定ではなく、確認検査で確定
- PrEP・PEP・U=UはHIVの予防と治療の言葉
参考文献
- 日本産婦人科医会. 性感染症について教えて下さい。(2017年1月20日作成). https://www.jaog.or.jp/qa/mature/%e6%80%a7%e6%84%9f%e6%9f%93%e7%97%87%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%e6%95%99%e3%81%88%e3%81%a6%e4%b8%8b%e3%81%95%e3%81%84%e3%80%82/ (閲覧日:2026年10月10日)
- 日本赤十字社. エイズ、肝炎などのウイルス保有者、またはそれと疑われる方. https://www.jrc.or.jp/donation/about/refrain/detail_04/ (閲覧日:2026年10月10日)
- Workowski KA, et al. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. MMWR Recomm Rep 2021;70(No. RR-4). https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/rr/rr7004a1.htm (閲覧日:2026年10月10日)
- 日本肝臓学会. C型肝炎治療ガイドライン(第8.2版・簡易版)(2023年6月、PDF). https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/C_v8.2_k_20230711.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 厚生労働科学研究費補助金エイズ対策政策研究事業 HIV感染妊娠に関する研究班. 女性のためのQ&A. https://hivboshi.org/faq/index.html (閲覧日:2026年10月10日)
- 厚生労働省. 性感染症報告数. https://www.mhlw.go.jp/topics/2005/04/tp0411-1.html (閲覧日:2026年10月10日)
- 厚生労働省(監修:国立成育医療研究センター). B型肝炎・C型肝炎ウイルスを知っていますか?(PDF). https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001053961.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 厚生労働省. 感染症法に基づく医師の届出:後天性免疫不全症候群(届出基準、PDF). https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/pdf/01-05-07-1.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 厚生労働省. 感染症法の対象となる感染症の分類と考え方(PDF). https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000957753.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
