トランスジェンダー・ノンバイナリーの人の性感染症の検査:検査は「性別」ではなく、いまの体のつくりと性行為に合わせて選ぶ。子宮頸部がある人は子宮頸がん検診も。受診しにくさが検査の遅れにつながらないように
米国CDCの性感染症治療ガイドライン(2021年)には、トランスジェンダー・ジェンダー多様な人の節があります。手術やホルモン療法、性行為のかたちは人によってちがうので、性感染症の検査は「性別」ではなく、いまの体のつくりと性行為に合わせて選ぶことがすすめられています。HIV検査はすべての人に、子宮頸部がある人には年齢に応じたクラミジア・淋菌の検査と子宮頸がん検診を。医療機関での差別への不安から受診が遅れやすいことも指摘されています。

メル美トランスジェンダーの友だちが、「性感染症の検査を受けたいけど、どの検査を受ければいいのか、窓口でどう説明したらいいのかわからない」って。

プレ男検査って、男性用・女性用で分かれているイメージがあったけど、どう考えればいいんだろう。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、トランスジェンダー・ノンバイナリーの人の性感染症の検査の話です。米国CDCの性感染症治療ガイドライン(2021年)の「トランスジェンダー・ジェンダー多様な人」の節をもとにまとめました。検査を受けようと考えていること自体が、とても大切な一歩です。
受診しにくさが、検査の遅れにつながる
CDCのガイドラインによると、
- トランスジェンダーの人は、偏見(スティグマ)や、経済的・社会的な壁にぶつかることが多く、それが医療の受けにくさや、HIV・性感染症へのかかりやすさにつながっています
- 医療者の知識不足や、医療の場での差別・診療の拒否などのために、予防のための受診を避けたり、遅らせたりすることが多く、HIVや性感染症の予防の機会を逃しやすいとされています
- そのため、医療機関は性自認や性的指向を話しやすい雰囲気をつくり、呼ばれたい呼び方(代名詞など)をたずねるなど、ことばの使い方に気を配ることがすすめられています

検査は「性別」ではなく、いまの体のつくりと、どんな性行為をしているかで選びます。話せる範囲で伝えてもらえると、必要な検査をもれなく選べます。
検査は「体のつくり」と「性行為」で選ぶ
CDCのガイドラインによると、
- 手術(性別適合手術)を受けたかどうか、ホルモン療法をしているかどうか、性行為のかたちは人によってさまざまです。だから、性別で決めるのではなく、いまの体のつくりと性行為に合わせて検査を選ぶことがすすめられています
- HIV検査は、すべてのトランスジェンダーの人にすすめ、話し合うべきとされています(HIV検査で「陽性」「要確認」と言われたら)
- 子宮頸部があるトランスジェンダー男性・ノンバイナリーの人で25歳未満の人には、クラミジア・淋菌の検査を年1回(女性と同じ)
- くり返しの検査の間隔は、リスクの大きさに合わせて決めます(性感染症の検査、どれくらいの頻度で受ける?)
- 口・のど、肛門など、性行為で使っている場所も検査の対象になります(のどの性感染症、直腸炎)
トランスジェンダー女性の場合
CDCのガイドラインによると、
- 多くの人は陰茎の手術を受けていないので、陰茎を使う性行為と、口・肛門で受ける性行為の両方がありえます
- 造腟術を受けた人は、つくられた腟を含めて、性行為で使うすべての場所を定期的に検査することがすすめられています。造腟の場合も前立腺は残っています
- つくられた腟には子宮頸部がないので、子宮頸がん検診は必要ないとされています
- つくられた腟の性感染症として、ヘルペス、HPV(尖圭コンジローマ)、クラミジア、淋菌の報告があります
トランスジェンダー男性・ノンバイナリーの人の場合
CDCのガイドラインによると、
- 子宮や子宮頸部が残っている人は、性感染症、HPV、ヘルペス、HIV、子宮頸がんのリスクがあります。子宮頸がん検診は、ふつうのガイドラインどおりに受けることがすすめられています(子宮頸がん検診)
- テストステロンを使っていると、腟の粘膜がうすくなり(萎縮)、検体がうまくとれないことが多いと報告されています
- 診察への抵抗感や差別への不安から、子宮頸がん検診を避けがちなことが指摘されています。腟の診察がむずかしいときは、綿棒によるHPV検査や、自分で綿棒をとる方法も選択肢として挙げられています
- テストステロンを使っていても、排卵が続き、妊娠する可能性があります。避妊についても相談しましょう(IUD・皮下インプラント、ミニピル)
予防のこと
- CDCのガイドラインは、性の健康についての話し合いに、性感染症の検査だけでなく、HIVの予防内服(PrEP)や曝露後予防(PEP)も含めるようにしています(PrEP、PEP)
- コンドームは、体のつくりや性行為のかたちにかかわらず、多くの性感染症のリスクを下げます(性感染症を防ぐ方法まとめ)
受診するときのヒント
- 予約のときや問診票で、呼ばれたい名前・呼び方を伝えてよいか、たずねてみましょう
- 話せる範囲で、いまの体のつくり(手術やホルモン療法)と、性行為で使っている場所を伝えると、必要な検査を選びやすくなります
- 性暴力にあった場合は、性暴力・性被害にあったらを見てください
がん検診については、トランスジェンダーの人のがん検診にまとめています。
まとめ
- 検査は「性別」ではなく、いまの体のつくりと性行為に合わせて選ぶ
- HIV検査はすべての人に
- 子宮頸部がある人は、クラミジア・淋菌の検査(25歳未満は年1回)と子宮頸がん検診を
- 造腟術を受けた人は、使っているすべての場所の検査を(子宮頸がん検診は不要)
- テストステロンを使っていても妊娠はありうる
- 受診しにくさから検査が遅れないように、話せる範囲で伝える
参考文献
- Workowski KA, et al. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. MMWR Recomm Rep 2021;70(No. RR-4)(Special Populations: Transgender and Gender Diverse Persons). https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/rr/rr7004a1.htm (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
