性風俗で働く人へ2026年9月26日

性風俗で働く人とお店のための性感染症ガイド(詳しい版)

お店で性病検査をするメリット・デメリット、検査項目と頻度、費用とその負担、陽性が出たときの流れ、病気ごとの治療と出勤再開の目安、プライバシーの守り方まで。性風俗店のスタッフとキャストが、日々の仕事で迷ったときに調べられるガイドです。

こんにちは、Dr. Taro です。 このページは、性風俗店のスタッフ・経営者と、働くキャストのためのガイドです。性病検査や、陽性が出たときの対応など、日々の仕事で迷ったときに、必要なところだけ調べて読めるようにまとめました。

新しく働き始める人向けの、短くまとめたものはかんたん版をご覧ください。お店で配れる印刷用PDF(A4・2ページ)もあります。

性感染症は、誰でもかかりうるものです。かかった人を責めるのではなく、早く見つけて、早く治して、広げない。 そのための仕組みを、お店とキャストで一緒につくっていきましょう。

目次

  1. 性風俗の仕事と性感染症
  2. お店で性病検査をするメリット・デメリット
  3. 検査項目はどうする?
  4. 検査の頻度とタイミング
  5. どこで受ける?費用は?
  6. 費用は誰が負担する?
  7. 検査結果の扱いとプライバシー
  8. 陽性が出たら
  9. 病気ごとの治療と、仕事を再開する目安
  10. 症状があるときは
  11. ピル:避妊と生理のコントロール
  12. 予防のためにできること
  13. よくある質問

1. 性風俗の仕事と性感染症

性風俗の仕事は、性感染症のリスクが高い

日本の梅毒の届け出(2024年4〜6月期〜2025年4〜6月期)では、梅毒と診断された女性の34〜37%が、直近6か月以内に性風俗の仕事をしていたと報告されています。一方、男性の38〜42%は、直近6か月以内に性風俗を利用していたと報告されています。

コンドームなしの性交(本番)があるとき

実際には、コンドームを使わない膣性交(本番)が行われている現場もあります。このガイドは医療の情報として、そうした現実もふまえて書いています。

それでもコンドームなしの性交がある場合は、次のような対策を組み合わせることで、リスクを下げられます。

コンドームなしの性交は、性感染症と妊娠の両方のリスクがぐっと上がります。できないときは、検査・PrEP・ピルなどを組み合わせて、自分の体を守ってください。

症状がないことが多い

クラミジアや淋菌(とくにのどや女性の性器)、梅毒の一部は、感染していても症状がないことが多い病気です。症状だけで判断せず、定期的に検査を受けることが大切です。

WHO(世界保健機関)も、性風俗で働く人に、症状がなくても定期的に性感染症の検査を受けられるようにすることをすすめています。


2. お店で性病検査をするメリット・デメリット

メリット

デメリット・注意点

うまくいくためのポイント


3. 検査項目はどうする?

定期検査の中心

このサイトでは、定期検査の中心は、クラミジア・淋菌・梅毒・HIVと考えています。

病気 検査 調べる場所 なぜ大切?
クラミジア 遺伝子検査(PCRなど) 性器(女性は腟ぬぐい液、男性は尿)とのど(うがい液など) 症状がないことが多い。放置すると不妊の原因に
淋菌 遺伝子検査(PCRなど) 性器とのど のどの淋菌は症状がないことが多く、治りにくいこともある
梅毒 血液検査 血液 増えている。症状が消えても治っていない
HIV 血液検査 血液 早く見つけて治療すれば、ふつうの寿命が期待でき、うつさない

最初に一度、または必要に応じて

ルーチンでは行わないもの


4. 検査の頻度とタイミング

どのくらいの頻度で?

このサイトでは、現実的な目安として、毎月の検査をおすすめしています。

ただし、毎月検査していれば十分、というわけではありません。検査のすぐあとに、性感染症にかかっている相手と接触すれば、うつることがあります。検査は「その時点までの確認」です。

感染してから、検査で分かるまでの期間

感染してすぐに検査しても、結果に出ないことがあります。目安は次のとおりです(このサイトの性行為後にやるべきことチェッカーと同じ目安です)。

病気 検査の目安 陰性をしっかり確認する目安
クラミジア 7日後以降 ―
淋菌 7日後以降 ―
腟トリコモナス 7日後以降 ―
梅毒 4週間後 12週間後
HIV 4週間後(抗原抗体検査) 90日後
B型肝炎 6週間後 12週間後
C型肝炎 約2か月後 12週間後

「コンドームが破れた」「気になるお客さんがいた」など、思い当たることがあるときは、定期検査を待たずに、この目安で検査しましょう。


5. どこで受ける?費用は?

受ける場所

場所 特徴
医療機関(性感染症内科、婦人科、泌尿器科など) 検査から治療まで一度にできる。のどの検査もできる
保健所 HIV・梅毒などの検査を、無料・匿名で受けられるところが多い。クラミジア・淋菌は扱っていないところもある
郵送検査 自宅でできる。ただし、陽性のときは医療機関を受診し直す必要がある

このサイトでは、医療機関での検査をおすすめしています。のどの検査もでき、陽性のときはその場で治療につなげられ、医師から結果の説明を受けられるためです。郵送検査で陽性だった場合は、医療機関を受診し直す必要があります。

くわしくは性感染症の検査のページをご覧ください。

保険が使えるとき・使えないとき


6. 費用は誰が負担する?

決まったルールはありません。代表的な考え方と、それぞれの特徴です。

負担のしかた よいところ 気をつけるところ
お店が全額負担 キャストが検査を受けやすい。検査の回数が保たれやすい お店の費用がかかる。結果の扱い(プライバシー)に特に注意
お店とキャストで分担 負担を分けられる 分担の割合を事前に決めておく
キャストが負担 お店は結果を持たないので、プライバシーは守りやすい 費用がハードルになり、検査の回数が減りやすい

このサイトでは、キャストが検査を受けやすい仕組みにすることが、いちばん大切だと考えています。

お店と検査会社・医療機関の関係にも注意

お店の性病検査のしくみは、お店によってさまざまです。

キャストは、費用の内訳や、どこで検査を受けるのかを確認しておくと安心です。お店がすすめる検査以外に、自分で医療機関を選んで受けることもできます。

なお、キャストの働き方が雇用か業務委託かによって、お店の責任や費用の考え方が変わることがあります。気になる場合は、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。


7. 検査結果の扱いとプライバシー

検査結果は「要配慮個人情報」

個人情報保護法では、病歴などは、差別や偏見につながらないよう特に配慮が必要な要配慮個人情報とされています。

お店で気をつけたいこと

「検査済み」の表示について

お店が「在籍キャストは定期的に性病検査をしています」などと表示することは、お店として予防に取り組んでいることを伝える方法のひとつです。


8. 陽性が出たら

流れ

  1. 本人に、プライバシーに配慮して伝える(ほかの人のいないところで、責めずに)
  2. 医療機関を受診して、治療を始める(陽性の結果を持って受診しましょう)
  3. 治療が終わり、仕事を再開してよい目安まで、仕事はお休み(→9)
  4. プライベートのパートナーにも、検査・治療をすすめる
  5. 治ったかの確認(治癒確認)や、約3か月後の再検査を受ける

出勤を止めるのは、法律上の決まり?

性感染症には、法律で決められた就業制限はありません。仕事を休む期間は、本人とお店で決めることになります。このガイドの目安を参考にしてください。

感染症法で就業制限の対象になるのは、一類〜三類感染症と新型インフルエンザ等感染症です。梅毒・HIV・クラミジア・淋菌などの性感染症は五類感染症で、就業制限の対象ではありません。

「誰からうつったか」は探さない

性感染症は、いつ、誰からうつったかは分からないことがほとんどです。お客さん探しや、キャストを責めることは、意味がないうえに、検査を避ける原因になります。

陽性が出たのは、検査がちゃんと役に立ったということ。 早く見つかってよかった、と考えて、しっかり治していきましょう。


9. 病気ごとの治療と、仕事を再開する目安

医師の判断がいちばん大切です。下は、一般的な目安です。

早く出勤することの是非

「治療したら、いつから働いていいの?」は、キャストにとってもお店にとっても、切実な問題です。このサイトの考え方を、正直にお伝えします。

理想は「治ったことを確認してから」

薬が効かないこともあるので、本来は、治ったことを検査で確認(治癒確認)してから仕事に戻るのがいちばん確実です。 ただ、治癒確認の検査は、クラミジアなら治療から約3週間後に行います。その間ずっと働けないのは、とくに生活のために働いている人にとって、大きな問題です。

このサイトの考え:クラミジア・淋菌などは、治療を受けたら出勤してもよい

このサイトでは、クラミジアや淋菌などは、治療の薬を飲んだら(注射を受けたら)、出勤してもよいと考えています。ドキシサイクリンのように7日間飲む薬の場合は、最後まで飲み切ることを前提に、数日飲んだら出勤してもよいと考えています。理由は次のとおりです。

マイコプラズマ・ジェニタリウムについて

ジェニタリウムは、治ったかの確認まで、薬を飲み切ってから約3週間かかり、クラミジアよりさらに長くなります。このサイトでは、本指名のお客さんやプライベートのパートナーにうつさないように、また自分にまた戻ってこないように対策をしたうえで、出勤してよいと考えています。 うつす可能性が残ることには倫理的な問題があることも分かったうえでの、現実的な落としどころです。ジェニタリウムは、クラミジアや淋菌に比べて、病気をおこす力がそれほど強くないと考えられることも、この判断の理由のひとつです。

そのかわり、守ってほしいこと

性風俗で働くこと、性風俗を利用することは、こうしたリスクと無縁ではいられません。だからこそ、完璧をめざすより、続けられる対策を重ねることが大切だと考えています。

なお、米国CDCなどのガイドラインでは、クラミジアや淋菌の治療のあとは、7日間はセックスを控えることがすすめられています。下の各項目には、この標準的な目安もあわせて書いています。

クラミジア

淋菌

梅毒

腟トリコモナス

性器ヘルペス

マイコプラズマ・ジェニタリウム

HIV

B型肝炎

尖圭コンジローマ


10. 症状があるときは

次のような症状があるときは、その日は仕事を休んで、医療機関を受診しましょう。


11. ピル:避妊と生理のコントロール

性風俗の仕事では、避妊と、生理の時期のコントロールも大切です。ピルは、そのどちらにも役立ちます。ただし、ピルは性感染症を防げません。必ずコンドームと組み合わせましょう。

避妊のためのピル

種類 特徴 くわしく
低用量ピル 毎日飲んで、排卵をおさえる。ふつうの使い方で1年間に妊娠する人は約7%(コンドームは約13%) 低用量ピル
ミニピル エストロゲンを含まない。血栓症のリスクが上がりにくく、35歳以上でたばこを吸う人や、前兆のある片頭痛の人なども使えることが多い ミニピル

生理の時期をずらす(月経移動)

仕事の予定に合わせて、薬で生理の時期をずらすことができます。

くわしくは月経移動のページをご覧ください。

生理中の仕事と、自分の体を守ること

生理中に仕事をするかどうかは、人それぞれです。仕事の内容も、挿入を伴わないもの(手や口を使うサービスなど)から、挿入を伴うものまでさまざまです。ここでは、生理中に働くときに、自分の体を守るために知っておきたいことをまとめます。

避妊に失敗したら

ほかの薬との飲み合わせ

12. 予防のためにできること

方法 ポイント
コンドーム 多くの性感染症のリスクを下げる。オーラルセックスでも使うと、のどへの感染を減らせる
ワクチン B型肝炎、HPV、A型肝炎
PrEP HIVの予防薬。希望があれば医師と相談
Doxy-PEP 性行為のあとに飲んで、梅毒・クラミジアなどを予防する方法。希望があれば医師と相談
避妊 ピルなど(→11)。ピルは性感染症は防げないので、コンドームと組み合わせる

事故があったとき(コンドームが破れた・外れたなど)


13. よくある質問

Q. 検査が陰性なら、安心して働けますか? A. 検査の直前にうつった場合は、まだ結果に出ないことがあります。また、検査のあとにうつることもあります。検査は「その時点までの確認」と考え、コンドームなどの予防を続けましょう。

Q. のどだけ陽性でした。性器は陰性です。仕事はできますか? A. のどの淋菌・クラミジアも、オーラルセックスでお客さんにうつります。性器と同じ考え方で、治療を受けてから出勤しましょう(→早く出勤することの是非)。のどの淋菌は治りにくいことがあるので、治ったかの確認(治療から約2週間後)を必ず受けましょう。

Q. お客さんからうつされたかもしれません。お客さんに伝えるべきですか? A. 誰からうつったかは分からないことがほとんどです。まずは自分の治療を優先しましょう。

Q. 生理中は検査できますか? A. 生理中でも、腟ぬぐい液の検査は受けられます。経血の量が多いと、理論上は検査の感度が下がる可能性があります(血液の成分は、遺伝子検査の反応をさまたげることが知られています)。ただ、このサイトの経験では、実際の診療で感度が下がっていると感じることはありません。

Q. 妊娠しているかもしれません。 A. 妊娠中の梅毒やHIVなどは、赤ちゃんにうつることがあります。医療機関で、妊娠していることを伝えて相談しましょう。

Q. 陽性が出たら、お店を辞めないといけませんか? A. 性感染症は、治療すれば治るものがほとんどです。治療して、治れば仕事に戻れるルールにすることで、キャストが安心して検査を受けられるようになります。


参考文献

  1. 国立健康危機管理研究機構. 感染症発生動向調査で届け出られた梅毒の概要(2025年第2四半期). https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idss/target-diseases/syphilis/notification/syphilis2025q2.pdf (閲覧日:2026年9月26日)
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  4. 個人情報保護委員会. 「要配慮個人情報」とはどのようなものを指しますか. https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq4-q011/ (閲覧日:2026年9月26日)
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  6. Centers for Disease Control and Prevention. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. https://www.cdc.gov/std/treatment-guidelines/ (閲覧日:2026年9月26日)
  7. Centers for Disease Control and Prevention. HIV Risk and Prevention Estimates(2024年11月5日). https://www.cdc.gov/hivpartners/php/riskandprevention/index.html (閲覧日:2026年9月26日)
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  9. Cetera GE, et al. Analyzing the association between menstrual coitus and endometriosis’ pathogenesis: A narrative review. Womens Health (Lond). 2025;21:17455057241305072. https://doi.org/10.1177/17455057241305072 (閲覧日:2026年9月26日)
  10. Mehta SD, et al. Sub-optimal menstrual materials and vaginal microbiome disruption in women relying on sex for livelihood. Front Cell Infect Microbiol. 2025;15:1662237. https://doi.org/10.3389/fcimb.2025.1662237 (閲覧日:2026年9月26日)
  11. 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 第18条(就業制限)(e-Gov法令検索). https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000114 (閲覧日:2026年9月26日)
  12. 厚生労働省. 感染症法に基づく医師の届出のお願い. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kekkaku-kansenshou11/01.html (閲覧日:2026年9月26日)
  13. Kermekchiev MB, et al. Live culture-based qPCR screening of Taq DNA polymerase variants for resistance to PCR inhibitors. Front Bioeng Biotechnol. 2025;13:1624735. https://doi.org/10.3389/fbioe.2025.1624735 (閲覧日:2026年9月26日)

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。