性風俗で働く人とお店のための性感染症ガイド(詳しい版)
お店で性病検査をするメリット・デメリット、検査項目と頻度、費用とその負担、陽性が出たときの流れ、病気ごとの治療と出勤再開の目安、プライバシーの守り方まで。性風俗店のスタッフとキャストが、日々の仕事で迷ったときに調べられるガイドです。
こんにちは、Dr. Taro です。 このページは、性風俗店のスタッフ・経営者と、働くキャストのためのガイドです。性病検査や、陽性が出たときの対応など、日々の仕事で迷ったときに、必要なところだけ調べて読めるようにまとめました。
新しく働き始める人向けの、短くまとめたものはかんたん版をご覧ください。お店で配れる印刷用PDF(A4・2ページ)もあります。
性感染症は、誰でもかかりうるものです。かかった人を責めるのではなく、早く見つけて、早く治して、広げない。 そのための仕組みを、お店とキャストで一緒につくっていきましょう。
目次
- 性風俗の仕事と性感染症
- お店で性病検査をするメリット・デメリット
- 検査項目はどうする?
- 検査の頻度とタイミング
- どこで受ける?費用は?
- 費用は誰が負担する?
- 検査結果の扱いとプライバシー
- 陽性が出たら
- 病気ごとの治療と、仕事を再開する目安
- 症状があるときは
- ピル:避妊と生理のコントロール
- 予防のためにできること
- よくある質問
1. 性風俗の仕事と性感染症
性風俗の仕事は、性感染症のリスクが高い
- 性感染症は、性器(腟・ペニス)だけでなく、口・のど、肛門にもうつります。オーラルセックス(フェラチオなど)でも、のどに淋菌・クラミジア・梅毒などがうつります
- 接触する相手の数が多いほど、性感染症にかかる機会は増えます
日本の梅毒の届け出(2024年4〜6月期〜2025年4〜6月期)では、梅毒と診断された女性の34〜37%が、直近6か月以内に性風俗の仕事をしていたと報告されています。一方、男性の38〜42%は、直近6か月以内に性風俗を利用していたと報告されています。
コンドームなしの性交(本番)があるとき
実際には、コンドームを使わない膣性交(本番)が行われている現場もあります。このガイドは医療の情報として、そうした現実もふまえて書いています。
- コンドームなしの膣性交では、クラミジア・淋菌・梅毒・HIV・B型肝炎・トリコモナス・ヘルペス・HPVなど、ほとんどすべての性感染症がうつる可能性があります。妊娠の可能性もあります
- 米国CDCによると、HIVに感染している相手との1回の性行為でHIVがうつる確率は、膣性交(受ける側)で1万回に8回、アナルセックス(受ける側)で1万回に138回と推定されています。1回あたりは低くても、回数が重なるほどリスクは積み重なります
- いちばんの予防は、コンドームを使うことです
それでもコンドームなしの性交がある場合は、次のような対策を組み合わせることで、リスクを下げられます。
- 検査の間隔を短くする、心配な出来事があったら定期検査を待たずに検査する(→4)
- HIVの予防薬(PrEP)を使う(→PrEP)
- 梅毒・クラミジアなどを予防するDoxy-PEPを、医師と相談する(→Doxy-PEP)
- ワクチン:B型肝炎、HPV
- 避妊:低用量ピルなど(→11)。避妊に失敗したらアフターピル
コンドームなしの性交は、性感染症と妊娠の両方のリスクがぐっと上がります。できないときは、検査・PrEP・ピルなどを組み合わせて、自分の体を守ってください。
症状がないことが多い
クラミジアや淋菌(とくにのどや女性の性器)、梅毒の一部は、感染していても症状がないことが多い病気です。症状だけで判断せず、定期的に検査を受けることが大切です。
WHO(世界保健機関)も、性風俗で働く人に、症状がなくても定期的に性感染症の検査を受けられるようにすることをすすめています。
2. お店で性病検査をするメリット・デメリット
メリット
- 症状のない感染を早く見つけて、早く治せる。本人の体を守れます(クラミジアや淋菌を放っておくと、不妊の原因になることがあります)
- お客さんや、ほかのキャストへ広がるのを防げる
- キャストが検査を受けやすくなる(時間・場所・費用のハードルが下がる)
- お店の安全への取り組みとして、キャストの安心につながる
デメリット・注意点
- 検査が陰性でも100%ではない:検査には、感染してから結果に出るまでの期間(ウィンドウピリオド)があります。また、次の検査までの間にかかることもあります。検査は「できる対策」のひとつと考え、コンドームなどの予防も続けることが大切です
- プライバシーの問題:検査結果は、法律上とくに慎重な扱いが必要な個人情報です(→7)。本人の同意なしに集めたり、ほかの人に伝えたりしてはいけません
- 検査の強制・差別につながるおそれ:陽性になった人が責められたり、辞めさせられたりすると、キャストは検査を避けるようになり、かえって感染が広がります
- 費用がかかる:誰が負担するかを決めておく必要があります(→6)
うまくいくためのポイント
- 検査は、キャスト本人の同意のうえで行う
- 陽性でも責めない。治療して、治れば仕事に戻れるルールにする
- 結果を知る人は、必要最小限にする
- 検査は予防の代わりにはならないことを、スタッフもキャストも理解する
3. 検査項目はどうする?
定期検査の中心
このサイトでは、定期検査の中心は、クラミジア・淋菌・梅毒・HIVと考えています。
| 病気 | 検査 | 調べる場所 | なぜ大切? |
|---|---|---|---|
| クラミジア | 遺伝子検査(PCRなど) | 性器(女性は腟ぬぐい液、男性は尿)とのど(うがい液など) | 症状がないことが多い。放置すると不妊の原因に |
| 淋菌 | 遺伝子検査(PCRなど) | 性器とのど | のどの淋菌は症状がないことが多く、治りにくいこともある |
| 梅毒 | 血液検査 | 血液 | 増えている。症状が消えても治っていない |
| HIV | 血液検査 | 血液 | 早く見つけて治療すれば、ふつうの寿命が期待でき、うつさない |
- のどの検査も必ず含めましょう。オーラルセックスで、のどに淋菌・クラミジアがうつります
- アナルセックスをする場合は、直腸(おしり)の検査も必要です
- 上の表は、主に女性のキャストを想定しています。男性のキャストは、性器は尿で調べます。アナルセックスで受ける側になる場合は、直腸も調べましょう
最初に一度、または必要に応じて
- B型肝炎:働き始めるときに一度調べ、抗体がなければワクチンをすすめます(B型肝炎ワクチン)
- C型肝炎:働き始めるときなどに一度
- 腟トリコモナス:おりものの変化やかゆみなど、症状があるときに
ルーチンでは行わないもの
- マイコプラズマ・ジェニタリウム:症状のない人全員に行う検査はすすめられていません。症状があるとき、クラミジア・淋菌の治療をしても治らないときなどに、医師と相談して調べます(くわしく)
- ウレアプラズマ・マイコプラズマ・ホミニス:症状のない人の検査・治療はすすめられていません(くわしく)
4. 検査の頻度とタイミング
どのくらいの頻度で?
- WHOは2025年のガイドラインで、性風俗で働く人とMSM(男性とセックスをする男性)に、少なくとも年1回、または6か月ごとのクラミジア・淋菌の検査をすすめています
- 実際の仕事では、接触する相手の数が多いため、もっと短い間隔で検査することが多く、毎月検査している人が多いです
このサイトでは、現実的な目安として、毎月の検査をおすすめしています。
ただし、毎月検査していれば十分、というわけではありません。検査のすぐあとに、性感染症にかかっている相手と接触すれば、うつることがあります。検査は「その時点までの確認」です。
- 出勤の回数が多い人、コンドームなしの性交がある人は、より短い間隔での検査も考えましょう
- 心配な出来事(コンドームが破れた、症状のあるお客さんだったなど)があったときは、毎月の検査を待たずに、下の目安で検査しましょう
- 検査と検査の間も、コンドームなどの予防を続けることが大切です
感染してから、検査で分かるまでの期間
感染してすぐに検査しても、結果に出ないことがあります。目安は次のとおりです(このサイトの性行為後にやるべきことチェッカーと同じ目安です)。
| 病気 | 検査の目安 | 陰性をしっかり確認する目安 |
|---|---|---|
| クラミジア | 7日後以降 | ― |
| 淋菌 | 7日後以降 | ― |
| 腟トリコモナス | 7日後以降 | ― |
| 梅毒 | 4週間後 | 12週間後 |
| HIV | 4週間後(抗原抗体検査) | 90日後 |
| B型肝炎 | 6週間後 | 12週間後 |
| C型肝炎 | 約2か月後 | 12週間後 |
「コンドームが破れた」「気になるお客さんがいた」など、思い当たることがあるときは、定期検査を待たずに、この目安で検査しましょう。
5. どこで受ける?費用は?
受ける場所
| 場所 | 特徴 |
|---|---|
| 医療機関(性感染症内科、婦人科、泌尿器科など) | 検査から治療まで一度にできる。のどの検査もできる |
| 保健所 | HIV・梅毒などの検査を、無料・匿名で受けられるところが多い。クラミジア・淋菌は扱っていないところもある |
| 郵送検査 | 自宅でできる。ただし、陽性のときは医療機関を受診し直す必要がある |
このサイトでは、医療機関での検査をおすすめしています。のどの検査もでき、陽性のときはその場で治療につなげられ、医師から結果の説明を受けられるためです。郵送検査で陽性だった場合は、医療機関を受診し直す必要があります。
くわしくは性感染症の検査のページをご覧ください。
保険が使えるとき・使えないとき
- 症状があるとき、医師が必要と判断した検査には、保険が使えます
- 症状がないときの定期的な検査(スクリーニング)は、ふつう自費になります
- のどの検査が保険で受けられるかどうかは、医師の診察によります
- 自費の検査の費用は、検査する項目の数や医療機関によって違い、数千円〜数万円程度です。性器とのど、血液(梅毒・HIV)をまとめて調べると、項目が増えるぶん高くなります
6. 費用は誰が負担する?
決まったルールはありません。代表的な考え方と、それぞれの特徴です。
| 負担のしかた | よいところ | 気をつけるところ |
|---|---|---|
| お店が全額負担 | キャストが検査を受けやすい。検査の回数が保たれやすい | お店の費用がかかる。結果の扱い(プライバシー)に特に注意 |
| お店とキャストで分担 | 負担を分けられる | 分担の割合を事前に決めておく |
| キャストが負担 | お店は結果を持たないので、プライバシーは守りやすい | 費用がハードルになり、検査の回数が減りやすい |
このサイトでは、キャストが検査を受けやすい仕組みにすることが、いちばん大切だと考えています。
お店と検査会社・医療機関の関係にも注意
お店の性病検査のしくみは、お店によってさまざまです。
- 郵送検査の会社からまとめて買って安くし、利益を出さずにキャストに提供しているお店もあります
- 一方で、検査会社や医療機関と提携して、紹介料や広告料などを受け取り、利益を出しているお店もあります
キャストは、費用の内訳や、どこで検査を受けるのかを確認しておくと安心です。お店がすすめる検査以外に、自分で医療機関を選んで受けることもできます。
なお、キャストの働き方が雇用か業務委託かによって、お店の責任や費用の考え方が変わることがあります。気になる場合は、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。
7. 検査結果の扱いとプライバシー
検査結果は「要配慮個人情報」
個人情報保護法では、病歴などは、差別や偏見につながらないよう特に配慮が必要な要配慮個人情報とされています。
- お店が検査結果を取得するには、原則として、あらかじめ本人の同意が必要です
- 検査結果をほかの人(第三者)に伝えるときも、原則として本人の同意が必要です
お店で気をつけたいこと
- 検査結果を知るスタッフは、必要最小限の人にする
- 結果の書類やデータは、鍵のかかる場所・パスワードのあるところに保管する
- 陽性だったことを、ほかのキャストやお客さんに話さない
- 必要なのは「出勤してよいかどうか」だけのことも多いです。病名まで共有する必要があるか、考えましょう
「検査済み」の表示について
お店が「在籍キャストは定期的に性病検査をしています」などと表示することは、お店として予防に取り組んでいることを伝える方法のひとつです。
- 検査は100%ではありません。検査のすぐ前や、検査のあとにうつることもあります。表示するときは「安全を保証する」ではなく、「できる対策をしています」という伝え方が合っています
- キャスト一人ひとりの検査結果をお客さんに見せる場合は、要配慮個人情報にあたるため、本人の同意が必要です
- 表示をしていても、コンドームなどの予防は続けることが大切です
8. 陽性が出たら
流れ
- 本人に、プライバシーに配慮して伝える(ほかの人のいないところで、責めずに)
- 医療機関を受診して、治療を始める(陽性の結果を持って受診しましょう)
- 治療が終わり、仕事を再開してよい目安まで、仕事はお休み(→9)
- プライベートのパートナーにも、検査・治療をすすめる
- 治ったかの確認(治癒確認)や、約3か月後の再検査を受ける
出勤を止めるのは、法律上の決まり?
性感染症には、法律で決められた就業制限はありません。仕事を休む期間は、本人とお店で決めることになります。このガイドの目安を参考にしてください。
感染症法で就業制限の対象になるのは、一類〜三類感染症と新型インフルエンザ等感染症です。梅毒・HIV・クラミジア・淋菌などの性感染症は五類感染症で、就業制限の対象ではありません。
「誰からうつったか」は探さない
性感染症は、いつ、誰からうつったかは分からないことがほとんどです。お客さん探しや、キャストを責めることは、意味がないうえに、検査を避ける原因になります。
陽性が出たのは、検査がちゃんと役に立ったということ。 早く見つかってよかった、と考えて、しっかり治していきましょう。
9. 病気ごとの治療と、仕事を再開する目安
医師の判断がいちばん大切です。下は、一般的な目安です。
早く出勤することの是非
「治療したら、いつから働いていいの?」は、キャストにとってもお店にとっても、切実な問題です。このサイトの考え方を、正直にお伝えします。
理想は「治ったことを確認してから」
薬が効かないこともあるので、本来は、治ったことを検査で確認(治癒確認)してから仕事に戻るのがいちばん確実です。 ただ、治癒確認の検査は、クラミジアなら治療から約3週間後に行います。その間ずっと働けないのは、とくに生活のために働いている人にとって、大きな問題です。
このサイトの考え:クラミジア・淋菌などは、治療を受けたら出勤してもよい
このサイトでは、クラミジアや淋菌などは、治療の薬を飲んだら(注射を受けたら)、出勤してもよいと考えています。ドキシサイクリンのように7日間飲む薬の場合は、最後まで飲み切ることを前提に、数日飲んだら出勤してもよいと考えています。理由は次のとおりです。
- 薬はよく効く:治療の薬は、9割5分くらいの人に効くと考えています。淋菌の注射薬(セフトリアキソン)は、日本の全国調査(2021年)で効かない菌は見つかっていません(ただし、日本でもまれに効かない菌が報告されています)。治療のあとに相手にうつす可能性は、ゼロではなくても、かなり低くなります
- お客さんは検査をしていない:お客さんの多くは検査を受けていないため、仕事をしていれば、また別の人からうつるリスクは、もともとあります。治癒確認まで長く休んでも、そのリスクは変わりません
- 厳しすぎるルールは、かえって逆効果:陽性になると長く働けないルールだと、休むことによる収入の損失が大きくなり、検査を受けなくなる、結果を隠す・偽るといった行動が増えるおそれがあります。そうなると、見つからない感染が広がり、かえって危険です
マイコプラズマ・ジェニタリウムについて
ジェニタリウムは、治ったかの確認まで、薬を飲み切ってから約3週間かかり、クラミジアよりさらに長くなります。このサイトでは、本指名のお客さんやプライベートのパートナーにうつさないように、また自分にまた戻ってこないように対策をしたうえで、出勤してよいと考えています。 うつす可能性が残ることには倫理的な問題があることも分かったうえでの、現実的な落としどころです。ジェニタリウムは、クラミジアや淋菌に比べて、病気をおこす力がそれほど強くないと考えられることも、この判断の理由のひとつです。
そのかわり、守ってほしいこと
- 処方された薬は、最後まで飲み切る
- 治癒確認の検査を、決められた時期に必ず受ける。陽性が続いていたら、すぐに医師に相談する
- 症状が続く・悪化するときは、仕事を休んで受診する
- できるかぎりコンドームを使う
性風俗で働くこと、性風俗を利用することは、こうしたリスクと無縁ではいられません。だからこそ、完璧をめざすより、続けられる対策を重ねることが大切だと考えています。
なお、米国CDCなどのガイドラインでは、クラミジアや淋菌の治療のあとは、7日間はセックスを控えることがすすめられています。下の各項目には、この標準的な目安もあわせて書いています。
クラミジア
- 治療:飲み薬(1回、または7日間)
- 仕事を再開する目安:このサイトの考え:1回の薬なら飲んだら、7日間の薬なら飲み切ることを前提に数日飲んだら、出勤してよい(上の「早く出勤することの是非」)/標準的な目安(米国CDC):1回の薬なら飲んでから7日後、7日間の薬なら飲み終わってから
- そのあと:約3週間後に治ったかを確認、約3か月後に再検査
淋菌
- 治療:注射・点滴(1回)
- 仕事を再開する目安:このサイトの考え:治療を受けたら出勤してよい/標準的な目安(米国CDC):治療から7日後
- そのあと:約2週間後に治ったかを確認(性器ものども)、約3か月後に再検査
梅毒
- 治療:飲み薬(4週間)、または筋肉注射
- 仕事を再開する目安:血液検査で治ったことを確認してから(最短で、治療を始めてから2週間ほど)
- そのあと:約4週間ごとに血液検査で、数値が下がるかを確認
腟トリコモナス
- 治療:飲み薬(10日間)
- 仕事を再開する目安:このサイトの考え:症状がなくなれば出勤してよい/標準的な目安(米国CDC):自分とパートナーの治療が終わり、症状がなくなってから
- そのあと:約3か月後に再検査
性器ヘルペス
- 治療:飲み薬
- 仕事を再開する目安:水ぶくれ・ただれが治ってから
- そのあと:再発しやすい。再発のときも同じ
マイコプラズマ・ジェニタリウム
- 治療:飲み薬(医師が選ぶ)
- 仕事を再開する目安:このサイトの考え:治ったかの確認(薬を飲み切ってから約3週間後)まで待つと、クラミジアよりさらに長くなります。そのため、本指名のお客さんやプライベートのパートナーにうつさないようにし、自分にまた戻ってこないように対策(コンドームなど)をしたうえで、出勤してよいとしています/標準的な目安:治ったことが確認できるまで(治療を始めて約5週間ほど)
- そのあと:治ったかの確認
HIV
- 最初の検査(スクリーニング検査)で陽性のとき:本当に感染しているかを調べる確認検査に進みます。スクリーニング検査は、感染していなくても陽性になることがあります。確認検査で陰性が確かめられれば、仕事を再開できます
- 確認検査で陽性(HIVに感染している)とき:まず、HIVの専門の医療機関で治療を始めましょう。治療でウイルスが抑えられていれば、性行為でうつらない(U=U)ことが分かっています。ただ、このサイトでは、HIVに感染していることを伝えずに性風俗の仕事を続けることには倫理的な問題があり、性風俗の仕事を続けるのは難しいと考えています
B型肝炎
- 治療:状態による。専門の医療機関へ
- 仕事を再開する目安:HBs抗原が陰性になってから
- 慢性化している(HBs抗原が陽性のまま続く)とき:このサイトでは、性風俗の仕事は続けるべきではないと考えています
尖圭コンジローマ
- 治療:塗り薬、凍らせる治療など
- 仕事を再開する目安:目で見て、イボがなくなっていれば
- そのあと:治療のあとも3か月は様子を見る
10. 症状があるときは
次のような症状があるときは、その日は仕事を休んで、医療機関を受診しましょう。
- おりものの量が増えた、色やにおいが変わった
- 性器や口に、しこり、ただれ、水ぶくれ、イボがある
- 排尿のときの痛み、下腹部の痛み
- のどの痛みが続く
- 体や手のひら・足の裏に、かゆみのない発疹が出た(梅毒のことがあります)
- 発熱、リンパ節のはれ
11. ピル:避妊と生理のコントロール
性風俗の仕事では、避妊と、生理の時期のコントロールも大切です。ピルは、そのどちらにも役立ちます。ただし、ピルは性感染症を防げません。必ずコンドームと組み合わせましょう。
避妊のためのピル
| 種類 | 特徴 | くわしく |
|---|---|---|
| 低用量ピル | 毎日飲んで、排卵をおさえる。ふつうの使い方で1年間に妊娠する人は約7%(コンドームは約13%) | 低用量ピル |
| ミニピル | エストロゲンを含まない。血栓症のリスクが上がりにくく、35歳以上でたばこを吸う人や、前兆のある片頭痛の人なども使えることが多い | ミニピル |
- 避妊を目的としたピルは、自費です
- ひどい生理痛(月経困難症)などの治療として使う場合は、保険が使えるピル(LEP)もあります。LEPにも避妊の効果があります
- 飲み忘れがあると、避妊の効果が下がります。毎日同じ時間に飲む習慣をつけましょう
- 低用量ピルでいちばん注意したい副作用は血栓症です。ふくらはぎの痛みや腫れ、急な息切れや胸の痛み、激しい頭痛があったら、すぐに受診しましょう
生理の時期をずらす(月経移動)
仕事の予定に合わせて、薬で生理の時期をずらすことができます。
- 中用量ピルを使う方法:
- 遅らせる:次の生理の予定日の5日前ごろから、予定が終わるまで毎日飲む。やめると2〜3日後に生理がくる。こちらのほうが確実です
- 早める:前の生理の5日目ごろまでに飲み始め、7〜10日間飲んでやめると、2〜3日後に生理がくる
- 低用量ピルを飲んでいる人は、休薬期間(成分の入っていない錠剤の期間)をとばして、次のシートを続けて飲むことで、生理を遅らせることもできます。続けて飲むと、少量の出血がおこりやすくなります
くわしくは月経移動のページをご覧ください。
生理中の仕事と、自分の体を守ること
生理中に仕事をするかどうかは、人それぞれです。仕事の内容も、挿入を伴わないもの(手や口を使うサービスなど)から、挿入を伴うものまでさまざまです。ここでは、生理中に働くときに、自分の体を守るために知っておきたいことをまとめます。
- 細菌性腟症に注意:細菌性腟症は、腟の乳酸菌が減ることでおこります。月経や性行為、腟の中での射精などが、乳酸菌が減るきっかけになります。このサイトでは、経血が腟の中にある状態での性行為は、細菌性腟症のリスクになると考えています。おりもののにおいや色の変化に気づいたら、受診しましょう
- 腟に入れるもの:生理中に、海綿(スポンジ)などを腟に入れて仕事をする人もいます。合う・合わないには個人差があります。腟に入れる綿やティッシュ、布などは、腟の中の細菌のバランスの乱れと関係していたという海外の研究があります。清潔なものを使い、仕事が終わったら必ず取り出すようにしましょう
- 性感染症の研究:生理中の性行為で性感染症にかかりやすくなるかどうかは、はっきりした根拠は多くありません。いつもと同じように、コンドームなどの予防をしましょう
- 生理の時期をずらす:仕事の予定と生理が重なりそうなときは、ピルで生理の時期をずらす方法もあります(上の「生理の時期をずらす」)
避妊に失敗したら
- アフターピルを、できるだけ早く飲みましょう
- レボノルゲストレル:72時間以内。薬局でも買える
- ウリプリスタール:120時間以内。効果がやや高い(日本では未承認)
- 何度もアフターピルが必要になる場合は、ふだんから低用量ピルやミニピルを使うことを考えましょう
ほかの薬との飲み合わせ
- 性感染症の予防のDoxy-PEP(ドキシサイクリン)とピルを一緒に飲んでも、現時点で、ピルの効果が落ちるという根拠はありません
- HIVの予防薬(PrEP)に使われる薬(テノホビル、エムトリシタビン)は、ピルとの大きな飲み合わせの問題はないとされています
- 米国CDCの基準では、次のような薬は、ピル(エストロゲンを含むもの)の避妊効果を下げる可能性があるとされています
- 一部のてんかんの薬(フェニトイン、カルバマゼピン、バルビツール酸系、プリミドン、トピラマート、オクスカルバゼピン)
- 結核などの薬(リファンピシン、リファブチン)
- 一部のHIVの治療薬(エファビレンツ、リトナビルで効果を強めた薬の一部)
- セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含む食品
- ふつうの抗菌薬(抗生物質)や抗真菌薬は、ピルの効果に影響しないとされています
- 飲んでいる薬やサプリメントは、必ず医師に伝えましょう
12. 予防のためにできること
| 方法 | ポイント |
|---|---|
| コンドーム | 多くの性感染症のリスクを下げる。オーラルセックスでも使うと、のどへの感染を減らせる |
| ワクチン | B型肝炎、HPV、A型肝炎 |
| PrEP | HIVの予防薬。希望があれば医師と相談 |
| Doxy-PEP | 性行為のあとに飲んで、梅毒・クラミジアなどを予防する方法。希望があれば医師と相談 |
| 避妊 | ピルなど(→11)。ピルは性感染症は防げないので、コンドームと組み合わせる |
事故があったとき(コンドームが破れた・外れたなど)
- 妊娠が心配 → アフターピルを、できるだけ早く(72時間以内、種類によって120時間以内)
- HIVが心配 → PEPを、72時間以内に(できるだけ早く)
- 性感染症の検査 → 風俗嬢のお仕事後チェッカー(男性は男性版)で、検査を受ける日を確認
13. よくある質問
Q. 検査が陰性なら、安心して働けますか? A. 検査の直前にうつった場合は、まだ結果に出ないことがあります。また、検査のあとにうつることもあります。検査は「その時点までの確認」と考え、コンドームなどの予防を続けましょう。
Q. のどだけ陽性でした。性器は陰性です。仕事はできますか? A. のどの淋菌・クラミジアも、オーラルセックスでお客さんにうつります。性器と同じ考え方で、治療を受けてから出勤しましょう(→早く出勤することの是非)。のどの淋菌は治りにくいことがあるので、治ったかの確認(治療から約2週間後)を必ず受けましょう。
Q. お客さんからうつされたかもしれません。お客さんに伝えるべきですか? A. 誰からうつったかは分からないことがほとんどです。まずは自分の治療を優先しましょう。
Q. 生理中は検査できますか? A. 生理中でも、腟ぬぐい液の検査は受けられます。経血の量が多いと、理論上は検査の感度が下がる可能性があります(血液の成分は、遺伝子検査の反応をさまたげることが知られています)。ただ、このサイトの経験では、実際の診療で感度が下がっていると感じることはありません。
Q. 妊娠しているかもしれません。 A. 妊娠中の梅毒やHIVなどは、赤ちゃんにうつることがあります。医療機関で、妊娠していることを伝えて相談しましょう。
Q. 陽性が出たら、お店を辞めないといけませんか? A. 性感染症は、治療すれば治るものがほとんどです。治療して、治れば仕事に戻れるルールにすることで、キャストが安心して検査を受けられるようになります。
参考文献
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- Kermekchiev MB, et al. Live culture-based qPCR screening of Taq DNA polymerase variants for resistance to PCR inhibitors. Front Bioeng Biotechnol. 2025;13:1624735. https://doi.org/10.3389/fbioe.2025.1624735 (閲覧日:2026年9月26日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
